2030年、世界のデータセンターは「日本1国分」の電気を使う
「クラウドに保存」と聞くと、空のどこかにデータがある気がします。実際は、地上の建物でコンピューターが24時間動いています。それを集めた施設がデータセンターです。
IEA(国際エネルギー機関)の2026年の報告では、世界のデータセンターの電力消費は、2025年の485TWh(テラワット時)から2030年に950TWhへ、ほぼ倍になる見通しです。IEAは前年の報告で、ほぼ同じ規模の2030年予測を「いまの日本全体の電力消費をわずかに上回る」と説明しています。
出典:IEA・2026年報告と同2025年報告。2025年は推計、2030年は予測です。
日本に造るのは、通信の近さと災害への備えのため
データセンターは、送金や予約を処理し、AIの答えも計算します。だから、海外に置けば済むとは限りません。国内の拠点は通信の遅れを抑えやすく、地域を分ければ災害の備えになります。
日本政府は、東京・大阪への集中を地方へ分け、電力と通信を一体で整える方針です。涼しい土地は冷やしやすいものの、使う人との距離や地盤も条件になります。
出典:衆議院・2026年4月22日経済産業委員会の政府答弁。
アイルランドでは、都市の家庭より多くの電気を使う
アイルランドの統計局によると、2025年にデータセンターが使った電気は、計量された電力消費全体の23%でした。2015年は5%です。同じ2025年、都市部の家庭は18%、農村部の家庭は9%でした。
【計算例】平均100MW(メガワット)で休まず動く施設を仮定します。年間では100×24時間×365日=87万6,000MWh。アイルランドの2025年の7,663GWh(766万3,000MWh)は、この仮の施設の約8.7か所分です。実在の施設の数字ではありません。
つまり、大きな施設が十数か所集まるだけで、国全体の電力の見通しに響きます。計画書の「最大受電容量」と「1年に実際に使う電力量」は、分けて読む必要があります。
地域への恩恵と負担は、表で分けて見る
とはいえ、建設中の仕事と、動き始めてから続く仕事は分けて考えます。
| 見る項目 | 期待できるメリット | 確認したい負担・限界 |
|---|---|---|
| 仕事・税収 | 建設工事、設備の保守、固定資産税など | 投資額の大きさだけでは、地元で続く雇用の人数は分からない |
| 電力 | 発電所や送電網への投資を後押し | 接続待ちや、設備増強の費用を誰が負担するか |
| 水・冷却 | 冷やす技術の改善が進む | 水の使用量は冷却方式や気候で大きく違う |
| 周辺環境 | 使われていない土地の活用 | 冷却機器の音、非常用発電機の試運転、建物の圧迫感 |
税収や誘致の優遇策は自治体ごとに違うため、金額は各自治体の資料で確かめてください。
世界では「建ててよい条件」が問われている
便利さは広く行き渡る一方、負担は建つ地域に集まりやすい。この点は各国で共通です。
| 国 | 確認できる動き | 読み取れる課題 |
|---|---|---|
| 日本 | 東京・大阪からの分散と、電力・通信の一体整備 | 土地だけでなく、電気と回線を確保できるか |
| 米国 | 送電網への接続が遅く、敷地内に天然ガス発電所を置く計画が増加 | 電力の確保と環境への負荷をどう両立するか |
| アイルランド | 2025年、計量された電力消費の23%がデータセンター | 一国への集中が電気の需給に与える重み |
| シンガポール | 上限は決めず、電力や水の効率を審査して少しずつ増設 | 限られた資源の中で成長できるか |
出典:米国は前掲のIEA・2026年報告、シンガポールは同国デジタル開発情報省・2026年3月3日の国会答弁。米国は計画の段階を含みます。
【注意】計画が出ただけで、近所の家が高く売れるとは限らない
「大きな投資が来るから、自宅も高く売れる」とは言い切れません。というのも、施設の用地を求める需要と、周りの住宅を求める需要は別だからです。
地元で働く人の数、交通、眺め、音によって、住宅への影響は変わります。また、水冷だから大量の水を使い捨てる、とも限りません。水を循環させる方式もあり、必要な量は施設ごとの計画で確かめます。
近くに計画が出たら、3つを確かめる
必要な施設であることと、どこにでも建ててよいことは別の話です。
ということで、①電気と水をどこから引くか、②夜間の音と非常用発電機の試運転の時間、③構想・申請・着工のどの段階か、を確かめてください。説明会や自治体の資料が手がかりです。
建物の大きさより、地域に残る利益と負担を見る。
よくある質問
Q. データセンターはAIのためだけの施設ですか?
いいえ。写真の保存、ネット通販、銀行や会社のシステムにも使われています。AI向けの施設は、その中で特に電気を多く使う種類です。
Q. 近くに建つと、電気代は上がりますか?
一律ではありません。電力の余裕や、送電網などへの投資費用を誰が負担するかで変わります。
Q. 近くに建つと、家は売りにくくなりますか?
一律には言えません。音や眺めなど、影響は家ごとに違います。売るときは計画の資料をそろえ、複数の会社に見方を聞いて比べると判断しやすくなります。

