結論:住み続けられる代わりに、売却価格は市場の6〜8割程度になる例が多い方法です
リースバックとは、自宅を不動産会社などの買主に売却し、同時にその買主と賃貸借契約(家を借りる契約)を結ぶことで、売却後もそのまま自宅に住み続ける方法です。仕組みとしては「売却」と「賃貸借契約」の組み合わせであり、特別な魔法ではありません。
先に結論をお伝えします。リースバックの売却価格は、市場価格の6〜8割程度になる例が多いのが実情です。つまり、通常の仲介売却より受け取れる金額は少なくなる代わりに、「引っ越さずにまとまった資金を得られる」という別の価値を買う取引だと理解するのが正確です。この構造上、リースバックには向いている人と向いていない人がはっきり分かれます。本記事では、仕組み、メリット・デメリット、家賃の決まり方、そしてよくある後悔パターンまで、順を追って解説します。
リースバックの仕組みをステップで理解する
図解の代わりに、取引の流れをステップで示します。
- 相談・査定:リースバックを扱う不動産会社に相談し、買取価格と家賃の提示を受けます。複数社から取るのが基本です。
- 条件交渉:買取価格、家賃、賃貸借契約の種類(普通借家か定期借家か)と期間、更新の可否、買戻し(将来自宅を買い戻すこと)の条件を詰めます。
- 売買契約の締結:自宅を買主(リースバック会社等)に売却する契約を結びます。
- 賃貸借契約の締結:同じ相手と、その家を借りる契約を結びます。売買契約とセットで行われるのがリースバックの特徴です。
- 決済・所有権移転:売買代金を受け取り、所有権が買主に移ります。この日から、あなたは「所有者」ではなく「借主(入居者)」になります。
- 家賃を払いながら居住:以後は毎月家賃を支払って住み続けます。固定資産税の負担は所有者である買主側に移ります。
- (希望する場合)買戻し:契約時に買戻しの合意をしていれば、条件に従って自宅を買い戻せる場合があります。買戻しに関する特約は書面にしておくことが必須です。口頭の約束は、担当者の異動や会社の方針変更で反故になったときに立証が極めて困難になります。
メリットとデメリットの対比
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 引っ越さずにまとまった資金を得られる | 売却価格が市場価格の6〜8割程度になる例が多い |
| 売却したことが近所に知られにくい(募集広告が出ないため) | 毎月の家賃負担が発生し、長く住むほど総支払額が増える |
| 固定資産税や建物の大規模修繕の負担がなくなる | 所有権を失うため、資産として子に残せない |
| 現金化までの期間が比較的短い例が多い | 定期借家契約(更新のない契約)の場合、期間満了で退去を求められる可能性がある |
| 買戻しの合意ができれば、将来再取得の道を残せる | 買戻し価格は売却価格より高く設定される例が多い |
このように、リースバックは「時間と住環境を守る代わりに、金額面では譲る」取引です。金額の最大化が目的なら、通常の仲介売却と比べてから判断すべきです。
家賃はどう決まるのか:買取価格×期待利回り
リースバックの家賃は、周辺の家賃相場から決まるのではなく、買取価格×期待利回りで決まります。期待利回りとは、買主である会社が投資額(買取価格)に対して年間いくらの家賃収入を求めるかという割合です。
想定例で考えます。買取価格が1,500万円、期待利回りが年8%なら、年間家賃は120万円、月額にすると10万円です。同じ家でも買取価格が1,800万円に上がれば、月額家賃は12万円に上がります。つまり、「高く買い取ってもらう」と「家賃を安くする」は原則として両立しません。ここがリースバックの交渉で最も重要なポイントです。手元資金を厚くしたいのか、月々の負担を抑えて長く住みたいのか、自分の目的を先に決めてから条件を比較しないと、提示条件の良し悪しを判断できません。
複数社を比較する際は、買取価格だけを並べるのではなく、「買取価格・月額家賃・契約期間・更新の可否・買戻し条件」の5点セットで表にして比べることをおすすめします。
向いている人・向いていない人
向いている人
- 住宅ローン以外の借入整理や医療・介護費用など、引っ越さずにまとまった資金を用意したい明確な目的がある人
- 数年以内に住み替えや施設入居の予定があり、それまでの期間だけ今の家に住めればよい人
- 自宅を子に残す意向がなく、固定資産税や修繕の負担から解放されたい高齢の方
- 事業資金が必要だが、売却の事実を周囲に知られたくない自営業の方
向いていない人
- 1円でも高く売りたい人(通常の仲介売却のほうが手取りが多くなる例が多いです)
- この先10年20年と長く住み続けたい人(家賃の総支払額が売却で得た資金を上回っていく可能性があります)
- 住宅ローンの残債が多く、買取価格でローンを完済できない人(原則として抵当権を外せず取引自体が成立しにくいです)
- 家賃の支払いを続ける収入の見通しが立たない人(滞納すれば賃貸借契約の解除、つまり退去につながります)
契約前に確かめたい点:後悔しやすいパターン
リースバック後のトラブル相談の事例を見ると、後悔の原因はおおむね共通しています。
- 定期借家の期間を確認していなかった:「ずっと住める」と思い込んでいたら定期借家契約(更新がなく期間満了で終了する契約)で、2〜3年で退去を求められたという相談は、消費者相談の場でもよく挙がるパターンです。普通借家か定期借家か、期間は何年か、再契約の条件はあるかを契約前に必ず確認してください。
- 買戻しの約束が口頭だけだった:「いつでも買い戻せますよ」という営業トークを信じて売却したものの、書面がなく、買戻し価格も決まっていなかったというケースです。買戻し特約は、価格・期限・条件を明記した書面が必須です。
- 1社の提示だけで決めてしまった:買取価格と家賃のバランスは会社によって大きく異なります。急かされて即決した結果、後から他社の条件を知って後悔する例が多いです。
- 手取り額と家賃の総額を比べていなかった:売却で得る金額から諸費用を引いた手取りと、住み続ける予定年数分の家賃総額を並べて計算していれば選ばなかった、という声もあります。
なお、リースバックをめぐっては勧誘トラブルが問題になっており、国土交通省が2022年に消費者向けのガイドブックを公表して注意喚起を行っています。高齢者への強引な勧誘や、仕組みを十分理解しないままの契約が典型例として挙げられています。契約を急がせる相手とは距離を置き、家族や専門家に相談してから判断することをおすすめします。
さらに国土交通省は、リースバック取引にも宅地建物取引業法の規定が適用されることを明確にした「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(リースバックに関するガイドライン)」を策定し、2026年10月1日から施行されます(出典: 国土交通省 住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。買戻し特約や違約金といった売買の条件だけでなく、家賃の額・支払方法、契約期間や更新、修繕費用の負担区分といった賃貸借の条件についても、判断に重要な影響を及ぼす事実を故意に告げない行為が禁止されることが明確化されました。断ったあとの勧誘の継続や長時間の勧誘も禁止の対象です。
まずは通常売却の手取りと比べてください
リースバックを検討する際の出発点は、「通常の仲介売却なら手元にいくら残るのか」を知ることです。その数字がないと、リースバックの提示価格が市場価格の何割なのか、その差額を払ってでも住み続ける価値があるのかを判断できません。当サイトの手取り計算ツールでは、売却価格から仲介手数料などの諸費用を差し引いた手残り額を、売却の実務で使われる計算式で無料試算できます。リースバックの提示を受ける前に、まず通常売却の手取りを把握しておきましょう。ほかの売却方法の解説は記事一覧からご覧いただけます。
