売却の方法2026年8月11日

不動産売却の契約不適合責任とは?【2026年版】売主が守られる書き方と免責特約の限界

契約不適合責任物件状況報告書免責特約瑕疵担保責任民法改正

最終更新:

結論:売主を守るのは免責特約ではなく、書いて渡した記録です

不動産を売った後に「雨漏りがする」「シロアリがいた」と言われる。この場面を規律するのが契約不適合責任です。

2020年4月1日の民法改正で、それまでの瑕疵担保責任は契約不適合責任に置き換わりました。変わった核心は判断基準です。旧法では、その欠陥が隠れていたか、つまり買主が知らなかったかが問われました。現行法が問うのは、その状態が契約の内容に適合しているかどうかです。

この違いは売主にとって決定的です。契約書や物件状況報告書に書いてあれば、それは契約の内容になり、不適合にはなりません。逆に、書かずに引き渡した不具合は、自分も知らなかったとしても責任を問われ得ます。

免責特約はもちろん有効です。ただし、知りながら告げなかった事実には効きません(民法572条)。守りの本命は特約ではなく、書いて渡すことです。


買主ができる4つの請求

契約不適合があった場合、買主は次の請求ができます(出典: e-Gov法令検索 民法 562条〜564条)。

請求根拠内容売主にとっての負担
追完請求562条修補、代替物の引渡し、不足分の引渡し修補費用の実費
代金減額請求563条追完を催告しても応じないときなどに代金を減らす売買代金の一部返還
損害賠償請求564条・415条債務不履行として損害の賠償修補費用を超える損害も対象になり得る
契約の解除564条・541条・542条契約自体をなかったことにする代金全額の返還

この4つには順番があります。原則としてまず追完請求、つまり直してくださいという求めがあり、それに応じない場合や修補が不能な場合に代金減額へ進みます。いきなり解除できるわけではなく、解除は契約をした目的を達することができないレベルの不適合が要件です。

金額のイメージをつかむために、3,000万円で戸建てを売却し、引渡し後に給排水管の腐食が判明したケースで考えます。

金額
売買代金3,000万円
配管の修補費用80万円
追完請求に応じた場合の実質手取り3,000万円 − 80万円 = 2,920万円
応じず代金減額に至った場合同額の80万円を返還

この80万円は、売却時に「配管の状態は未確認」と書いて説明していれば、争いの土俵そのものが変わっていた金額です。契約不適合責任の実務は、ほぼここに集約されます。


旧法との違いを整理する

瑕疵担保責任(2020年3月31日まで)契約不適合責任(2020年4月1日以降)
判断基準隠れた瑕疵かどうか契約の内容に適合するか
買主の請求損害賠償・解除のみ追完・代金減額・損害賠償・解除
責任の性質法定責任と解する見解が有力債務不履行責任
期間買主が瑕疵を知った時から1年以内に権利行使買主が不適合を知った時から1年以内に通知
【図表1:判断基準が「隠れていたか」から「契約の内容に適合するか」へ。買主の請求手段は2つから4つに増加 出典:民法562条〜566条】

買主の請求手段が増えた点は、売主にとって明確に不利な変更です。一方で、契約の内容を売主側が具体的に定義できるようになった点は、準備をする売主にとって有利に働きます。


期間制限は「知った時から1年以内の通知」

民法566条は、種類または品質の不適合について、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ請求できないと定めています。

起算点が引渡しの日ではなく、買主が不適合を知った日であることに注意してください。引渡しから5年後に知れば、そこから1年です。また、必要なのは通知であって訴訟の提起ではありません。この不具合があると具体的に伝えれば足ります。

さらに、数量の不足や権利の不適合には566条は適用されません。この場合は一般の消滅時効、つまり権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年によることになります。

つまり、期間の特約を置かないまま売ると、売主の責任は事実上長く残ります。だからこそ実務では契約書で期間を区切ります。


売主が誰かで、置ける特約が変わる

売主買主置ける特約
個人個人契約自由。期間を3か月に短縮する特約や、全部免責の特約も有効とされる
宅建業者個人(業者でない)民法566条より買主に不利な特約は無効。ただし引渡しの日から2年以上とする特約は有効(宅地建物取引業法40条)
個人宅建業者契約自由。買取業者に売る場合は免責が通りやすい

(出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 40条)

一般の個人が自宅を売る場合、実務でよく見るのは「引渡し後3か月に限り、雨漏り・シロアリの害・建物構造上主要な部位の腐食・給排水設備の故障について責任を負う」という形の特約です。築古の戸建てや相続した空き家では、全部免責とすることもあります。

ただし民法572条は、売主が知りながら告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れないと定めています。免責特約を入れたから知っていた雨漏りは黙っていよう、という発想は通用しません。むしろ特約を入れた事実が、後から見て悪質性の材料になります。告知すべき範囲の考え方は不動産売却の告知義務とは?を、心理的な事情については事故物件と告知義務の範囲をご覧ください。


物件状況報告書を「防具」として書く

契約時に売主が記入する物件状況報告書(告知書)と付帯設備表は、単なる事務書類ではありません。契約の内容を形づくる文書です。

物件状況報告書で埋めるべき項目は、雨漏りの有無と過去の発生・修理の履歴、シロアリ被害の有無と駆除の時期、給排水管の故障や漏水の履歴、基礎や柱・梁など建物構造上主要な部位の腐食、増改築やリフォームの履歴、火災や浸水などの被害、境界の状況と越境物の有無、近隣との申し合わせ事項や騒音・臭気、そして事件・事故・自殺など心理的な事情です。

書き方で最も危険なのは空欄です。空欄は問題がないと読まれかねません。分からないものは「不明」「未確認」と明記してください。修理したものは「2019年に業者Aが屋根を修理。以後の再発なし」のように時期と内容まで書きます。記憶が曖昧なものは「20年ほど前に一度、詳細は不明」と正直に書けば足ります。

不明と書いておけば、買主はそのリスクを認識したうえで価格に反映させます。知らなかったことを書かずに引き渡すより、知らないと書いて引き渡すほうが圧倒的に安全です。

付帯設備表も同じ考え方です。給湯器、エアコン、食洗機、インターホン、照明、網戸、物置まで、残すものを一つずつ記載します。動かないものは故障と明記してください。動くと思っていた、は最も多いトラブルの原因です。

記録は引渡し後7年ほど保管しておくことをおすすめします。買主が不適合を知るのは何年も先かもしれません。そのときに、これは説明済みですと示せる状態にしておく。必要書類の全体像は不動産売却の必要書類一覧にまとめています。


インスペクションという選択肢

建物状況調査(インスペクション)は、既存住宅の劣化や不具合の状況を専門家が調べる制度です。費用は数万円から10万円程度が一つの目安とされます。

売主にとっての意味は二つあります。引渡し後に発覚するより売る前に把握して説明したほうが安く済むこと。そして、買主が独自に調査して指摘してくるより、売主が結果を示して条件を提示するほうが主導権を保てることです。

一方で、調査で不具合が見つかれば説明義務が生じます。調べなければよかった、とはなりません。それは知らないまま売って後で請求されるリスクを前倒ししただけです。戸建ての注意点は一戸建て売却の注意点8つも参考にしてください。


よくある質問

Q. 全部免責の特約を入れれば、もう何も心配しなくていいですか?

いいえ。知りながら告げなかった事実には免責特約は効きません(民法572条)。また、免責を強く求めると買主が警戒し、価格が下がったり買主が離れたりします。免責は築古で自分も状態が分からないケースの現実的な落としどころであって、隠すための道具ではありません。

Q. 自分も知らなかった不具合でも責任を負うのですか?

契約不適合責任は売主の落ち度を要件としません。知らなかったことを理由に免れることはできません。だからこそ、期間を区切る特約と、未確認と書いた記録が意味を持ちます。

Q. 引渡し後3か月の特約なら、3か月経てば絶対に安全ですか?

その特約が有効である限り、原則としてその期間で区切られます。ただし知りながら告げなかった事実は別です。加えて、詐欺に当たるような事案では別の法律構成で争われる可能性もあります。特約があるから何を隠してもよい、という発想は成り立ちません。

Q. 買主から直せと言われました。すぐ応じるべきですか?

確認すべきは三点です。その状態は契約書や物件状況報告書に記載していたか。期間の特約の範囲内か。請求されている金額は妥当か。記載済みであれば、それは契約の内容であって不適合ではない可能性があります。その場で金額に同意せず、仲介会社を通して事実関係を整理してください。価格や条件の交渉一般については値下げ交渉の判断基準も参考になります。

Q. 相続した空き家を売ります。状態がまったく分かりません。

その場合こそ、不明を正しく使う場面です。加えて、免責特約または短期の期間制限を仲介会社と相談してください。買主も築古の空き家であることは理解して買います。分からないことを分からないと示すのが、最も安全な売り方です。


売る前に、手取り額を知っておきませんか

不動産売却は、売る前の準備で決まります。URUMAEの無料ツールなら、査定前に自分で概算をつかめます。

※特約の有効性や個別事案の判断は、契約書の文言と事実関係によって異なります。争いが生じている場合は弁護士にご相談ください。

この記事について

本記事は、不動産売却情報メディア URUMAE 編集部が公表されている制度・法令に基づいて執筆・編集しています。 制度・税率は執筆時点の情報です。個別の税務相談は税理士にご相談ください。

運営者は宅地建物取引士。不動産業界での実務経験15年。

運営者情報を見る

売る前に、まず相場を確かめる

査定を依頼する前に自分で相場の見当をつけておくと、各社の査定額が妥当かどうかを判断できます。 国土交通省が公開している実際の取引データをもとに、町丁目別の相場を無料で公開しています。

町丁目別の相場を見る

関連記事