結論:「人口が減って売れない街」ではありません。効いているのは丁目ごとの築年数の差です
ポートアイランドについて「人口が25%減った」という話を聞いたことがあるかもしれません。数字自体は間違っていません。ただしその減少は1995年から2000年にかけて起きたもので、阪神・淡路大震災の影響です。2000年以降の20年間は、ほぼ横ばいで推移しています。
神戸市が公表しているポートアイランドの分析資料には、国勢調査に基づく人口推移が載っています(出典: 神戸市からの報告 ポートアイランドに関する経済的側面等からの分析・評価)。
| 年 | 人口 |
|---|---|
| 1985年 | 14,212人 |
| 1990年 | 17,250人 |
| 1995年 | 20,650人 |
| 2000年 | 15,125人 |
| 2005年 | 14,434人 |
| 2010年 | 15,321人 |
| 2015年 | 14,962人 |
| 2020年 | 15,234人 |
同資料も「阪神・淡路大震災後、減少、その後は横ばい」と整理しています。いま売却を考えている方が向き合うべきなのは、30年前の減少ではなく、別の変化です。それが高齢化と、丁目ごとの築年数の差です。
本当に効いている変化1:若い世代だけが減っている
人口の総数は横ばいでも、中身は変わりました。同資料には20代から30代の人口推移が、神戸市中央区・神戸市全体との比較で載っています。
| エリア | 1985年 | 2020年 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ポートアイランド | 5,579人 | 3,199人 | 57.3% |
| 神戸市中央区 | 35,827人 | 36,254人 | 101.2% |
| 神戸市 | 414,101人 | 288,463人 | 69.7% |
注目すべきは中央区との比較です。中央区全体では20代から30代がほぼ横ばい(101.2%)なのに、ポートアイランドだけが57.3%まで減っています。神戸市全体の69.7%よりも落ち込みが大きい。
高齢化率も2020年時点でポートアイランドが30.5%、神戸市全体が27.5%、中央区が21.1%です。中央区の中でポートアイランドだけが際立って高齢化しています。
売主にとってこれが意味するのは、「同じ中央区だから三宮と同じように売れる」とは考えないほうがよいということです。買主として想定すべき層が違います。
本当に効いている変化2:丁目によって買主層がまったく違う
ここが、この島の売却を考えるうえで最も重要な部分です。
神戸市の同資料は、ポートアイランド内の地区ごとに「若年世代比率(20歳から39歳の割合)」と「住宅の平均築年数」を並べています。
| 地区 | 若年世代比率 | 平均築年数 | エリア内人口 |
|---|---|---|---|
| 港島中町8丁目 | 47.6% | 4.0年 | 639人 |
| 港島中町5丁目 | 30.5% | 10.0年 | 622人 |
| 港島1丁目 | 28.6% | 14.0年 | 949人 |
| 港島中町2丁目 | 19.8% | 31.3年 | 2,296人 |
| 港島中町3丁目 | 19.7% | 39.6年 | 7,943人 |
| 港島中町6丁目 | 14.8% | 34.7年 | 2,785人 |
神戸市自身が「築年数の浅い住宅のある地域は若年世代比率が高い」「住棟の築年数と概ね比例関係」と分析し、新規の住宅供給があれば若年世代が流入する可能性があると評価しています。
つまり、ポートアイランドで若い世帯が減ったのは「島だから」でも「人気がないから」でもありません。新しい住宅が供給されなかった地区で、住民がそのまま歳を重ねたという説明が、市自身のデータと整合します。実際、築4.0年の8丁目では若年世代比率が47.6%に達しています。
売却にあたっては、「ポートアイランドの相場」という粗い括りで考えないことです。自分の物件が何丁目にあり、周辺の平均築年数がどのくらいかで、想定すべき買主像が変わります。
本当に効いている変化3:昼間は人が多い
意外に知られていませんが、ポートアイランドの昼夜間人口比率は296.3です。夜間人口14,961人に対し、昼間人口は44,333人。神戸市全体の101.4と比べると、その差は歴然です。
| エリア | 昼間人口 | 夜間人口 | 昼夜間人口比率 |
|---|---|---|---|
| ポートアイランド | 44,333人 | 14,961人 | 296.3 |
| JR三ノ宮駅周辺 | 129,938人 | 25,709人 | 505.4 |
| 神戸市中央区 | 329,801人 | 136,230人 | 242.1 |
| 神戸市 | 1,545,219人 | 1,524,239人 | 101.4 |
昼間人口の内訳は就業者が62.8%、就学者が25.1%です。大学と企業が集まっていることの表れで、市の資料も「働く場所・学ぶ場所としての求心力」と評価しています。
売主から見れば、これは通勤・通学のために島の近くに住みたい層が実際に存在するということです。売却時の訴求材料として使えます。空きテナントの映像だけを見て「誰もいない島」と判断するのは、数字と合いません。
売り時をどう考えるか
以上を踏まえると、ポートアイランドの売り時の判断材料は次のように整理できます。
追い風になっている要素
- 神戸市全体の中古マンション成約平方メートル単価は前年同期比プラス9.9%、成約件数は9四半期連続で増加しています(2026年4〜6月期・出典: 近畿レインズ 季刊市況トレンドレポート2026年4〜6月期)
- 昼間人口が多く、近くに住みたい層が存在する
- 人口総数は20年以上横ばいで、急激な流出は起きていない
向かい風になっている要素
- 20代から30代が中央区平均に反して減り続けている
- 高齢化率が中央区で突出して高い
- 築年数の古い地区ほど若年世代比率が低く、買主の母数が限られる
具体的な計算例:市平均との比較で自分の位置を知る
2026年4〜6月期の神戸市の中古マンションは、平均築年数30.10年、成約平方メートル単価41.01万円でした。専有面積70平方メートルなら、41.01万円 × 70平方メートル = 約2,871万円が市平均の水準です。
ここで港島中町3丁目(平均築年数39.6年)を考えると、市の平均より約9.5年古いことになります。築年数が古いほど単価は下がる傾向にあるため、市平均の2,871万円をそのまま自分の期待値にするのは危険です。
逆に港島中町8丁目のような築浅の地区であれば、市平均を上回る条件で臨める可能性があります。まず市平均と自分の物件の築年数の差を把握し、そこから調整して考えるのが現実的な進め方です。区ごとの相場は神戸市のマンション売却相場で整理しています。
売る前にやっておくこと
- 自分の丁目の平均築年数を把握する — 上の表で自分の地区がどこに位置するかを確認します。買主層の想定が変わります。
- 通勤・通学の訴求材料をまとめる — ポートライナーでの三宮までの所要時間、島内の大学・企業・病院。昼間人口の多さは実在する需要です。
- 売り出しの時期を単価で判断する — 平均価格ではなく平方メートル単価の推移を見ます。理由は不動産の売り時はいつかで解説しています。
築年数が進んだ物件の売り方は築古マンションを売る方法もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. ポートアイランドの人口は本当に25%減ったのですか?
1995年の20,650人から2020年の15,234人へ、約26%減っています。ただしこの減少のほとんどは1995年から2000年にかけて起きたもので、阪神・淡路大震災の影響です。2000年の15,125人と2020年の15,234人を比べると、20年間ほぼ横ばいです。
Q. 島だから売りにくいということはありますか?
神戸市の資料では、住宅の平均築年数が浅い地区ほど若年世代比率が高いという関係が示されています。市自身も新規の住宅供給によって若年世代が流入する可能性を指摘しており、「島だから人が来ない」という説明はデータと整合しません。
Q. 高齢化率が高いと売却に不利ですか?
一概には言えません。高齢化率が高い地区は築年数の古い住棟が多い傾向があり、そちらの影響のほうが直接的です。一方で、医療・介護の施設が近いことを評価する買主層も存在します。
Q. 港島中町と港島南町では違いますか?
神戸市の資料では地区ごとに若年世代比率と平均築年数が示されており、同じ島の中でも数字に大きな差があります。丁目単位で確認することをおすすめします。
Q. 昼間人口が多いことは売却の役に立ちますか?
ポートアイランドの昼夜間人口比率は296.3で、神戸市全体の101.4を大きく上回ります。昼間人口の内訳は就業者62.8%、就学者25.1%です。島内で働く人や学ぶ人が実際に多いという事実は、通勤・通学の利便を訴求する根拠になります。
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