結論:商業施設の衰退と、住宅が売れるかどうかは別の話です
六甲アイランドについては「商業施設からテナントが消えた」という話がよく取り上げられます。それ自体は事実ですが、住宅を売る側が見るべき数字は別にあります。
神戸市が公表している住民基本台帳の町丁目別人口から、六甲アイランドの住宅地にあたる東灘区向洋町中を集計すると、次のようになります(出典: 神戸市 住民基本台帳に基づく人口(町丁目別・年齢別) の平成28年1月31日現在および令和8年6月30日現在のデータを集計)。
| 項目 | 2016年1月31日 | 2026年6月30日 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 人口 | 18,939人 | 19,029人 | プラス90人 |
| 世帯数 | 7,672世帯 | 8,553世帯 | プラス881世帯 |
| 65歳以上 | 3,238人 | 5,079人 | プラス1,841人 |
| 高齢化率 | 17.1% | 26.7% | プラス9.6ポイント |
読み取れることは3つです。
- 人口は減っていません。10年でプラス90人、ほぼ横ばいです。
- 世帯数だけが881増えています。同じ人口を、より多くの世帯で分け合っている。つまり1世帯あたりの人数が減りました。
- 高齢化率が9.6ポイント上がりました。これがいちばん大きな変化です。
「テナントが消えた」という商業の話と、「住宅が売れるか」という話は、そのまま結びつきません。分けて考える必要があります。
世帯数だけが増えているのは何を意味するか
人口が横ばいで世帯数が増える現象は、多くの場合、子どもが独立して出ていき、親世代が残ることで起きます。1世帯あたりの人数を計算すると、2016年は2.47人、2026年は2.22人です。
売主にとって重要なのは、この動きが売却物件の供給側にも回ってくるということです。高齢の世帯が施設に移る、相続が発生する、といったタイミングで住戸が市場に出ます。同じ島の中で似た条件の物件が複数出れば、買主は比較します。
一方で、世帯数が増えているということは、単身や2人世帯の受け皿として実際に選ばれているということでもあります。空き家になって世帯数が減っているわけではありません。
丁目によって高齢化率がまったく違う
六甲アイランドを一括りにすると判断を誤ります。丁目別に集計すると差は歴然です。
| 丁目 | 人口(2026年6月30日) | 65歳以上 | 高齢化率 |
|---|---|---|---|
| 向洋町中9丁目 | 784人 | 52人 | 6.6% |
| 向洋町中7丁目 | 3,961人 | 546人 | 13.8% |
| 向洋町中5丁目 | 6,059人 | 1,433人 | 23.7% |
| 向洋町中3丁目 | 3,007人 | 1,109人 | 36.9% |
| 向洋町中1丁目 | 3,505人 | 1,301人 | 37.1% |
| 向洋町中6丁目 | 882人 | 335人 | 38.0% |
| 向洋町中2丁目 | 773人 | 303人 | 39.2% |
最も低い9丁目の6.6%と、最も高い2丁目の39.2%では、6倍近い開きがあります。同じ島、同じ町名でも、住んでいる人がまったく違います。
10年前と比べると、この差はさらにはっきりします。2016年時点で7丁目は9.7%、5丁目は13.6%でした。当時から若い層が多かった地区に、いまも若い層が集まっています。
売却にあたっては、自分の丁目がこの表のどこに位置するかをまず確認してください。買主として想定すべき層も、売り出しで訴えるべき点も変わります。
買主が気にすること3つと、答え方
人工島の物件では、買主から共通して確認される点があります。準備しておくと交渉が早く進みます。
1. 交通が1本しかないのではないか
六甲ライナーが主要な公共交通です。買主が気にするのは「止まったらどうするか」です。バス路線の有無、車での所要時間、勤務先までの経路を具体的に示せると安心材料になります。抽象的に「便利です」と言うより、実際の所要時間を分単位で出すほうが効きます。
2. 商業施設が撤退しているのではないか
ここは正直に事実を伝えたうえで、生活に必要な店が現在どうなっているかを具体的に示すのが現実的です。スーパー、医療機関、学校、保育施設の現状は買主が必ず調べます。先に調べて資料にしておけば、買主が自分で調べて不安になる前に説明できます。
人口が10年横ばいで世帯数が増えているという事実は、この場面で使える客観的な材料です。
3. 災害のときに孤立しないか
埋立地であること、橋で本土とつながっていることは変えられません。買主が知りたいのは「実際にどうなるか」です。神戸市が公開しているハザードマップの内容、建物の耐震性能、管理組合の防災体制などを、資料として整理しておきます。
相場をどう見るか
神戸市全体の中古マンションは、2026年4〜6月期の成約平方メートル単価が41.01万円で前年同期比プラス9.9%、成約件数は695件で9四半期連続の増加でした(出典: 近畿レインズ 季刊市況トレンドレポート2026年4〜6月期)。市全体では売り手に不利な局面ではありません。
具体的な計算例:市平均を出発点にする
専有面積80平方メートルの住戸で、市平均の単価をそのまま当てはめると次のようになります。
- 41.01万円 × 80平方メートル = 約3,281万円
これはあくまで神戸市全体の平均(平均築年数30.10年)です。ここから、自分の物件の築年数・階数・眺望・管理状態で上下します。市平均を「基準線」として持ち、そこから何がプラスで何がマイナスかを説明できる状態にしておくと、査定額の妥当性を自分で判断できます。
区ごとの相場感は神戸市のマンション売却相場、売り出す時期の考え方は不動産の売り時はいつかで整理しています。
売る前にやっておくこと
- 自分の丁目の高齢化率を確認する — 上の表で位置を把握します。買主層の想定が変わります。
- 生活利便の現状を資料にする — スーパー、医療機関、学校、保育施設。買主が必ず調べる項目を先回りします。
- 管理組合の資料を取り寄せる — 長期修繕計画、修繕積立金の残高、耐震や防災の取り組み。築年数が進んだ物件では特に見られます。詳しくは修繕積立金の値上げとマンション売却をご覧ください。
よくある質問
Q. 六甲アイランドは人口が減っているのですか?
神戸市の住民基本台帳で東灘区向洋町中を集計すると、2016年1月末が18,939人、2026年6月末が19,029人です。10年でほぼ横ばいで、減少はしていません。
Q. 商業施設が空いていると、マンションの価格は下がりますか?
商業施設の空室と住宅の成約価格は別の統計です。この記事で示したとおり、人口は横ばいで世帯数は増えています。ただし買主が生活利便を不安に感じることはあるため、現状を具体的に説明できる準備は必要です。
Q. 高齢化率が26.7%というのは高いのですか?
神戸市全体と比べると低い水準です。ただし10年で9.6ポイント上がっており、上昇の速さのほうが注目点です。また丁目による差が非常に大きく、6.6%から39.2%まで開きがあります。
Q. 島だと住宅ローンが通りにくいことはありますか?
一般に、住宅ローンの審査は借入する人の属性と物件の担保評価で判断されます。人工島であること自体を理由に一律に扱われるという公表された基準はありません。個別の条件は金融機関に確認してください。
Q. ポートアイランドと比べてどうですか?
同じ集計方法で港島・港島中町を見ると、2016年1月末が14,080人・高齢化率28.5%、2026年6月末が14,150人・高齢化率33.1%です。人口が横ばいで高齢化が進む点は共通していますが、高齢化率は六甲アイランドのほうが低い水準です。
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