神戸・阪神間2026年8月25日

神戸市のタワマン規制とは【2026年版】中央区の中古は売り時なのか

神戸市タワーマンション中央区都心機能誘導地区マンション売却

結論:新築が止まった影響は「単価」に出ています。ただし建替えの制約とセットで考える必要があります

神戸市は2020年(令和2年)7月1日から、都心部で住宅の建築を制限しています。三宮周辺の一部では住宅そのものを建てられず、その周辺では大きな敷地に建てる建物の住宅部分の容積率が400%までに抑えられています(出典: 神戸市 特別用途地区「都心機能誘導地区」)。

この規制は「タワマン規制」として全国的に話題になりました。売る側にとっての関心は一点で、新築が建たないなら、いま持っている中古は高く売れるのかということでしょう。

直近の数字を見ると、神戸市の中古マンションの成約平方メートル単価は41.01万円で前年同期比プラス9.9%、成約件数は695件で9四半期連続の増加です(2026年4〜6月期・出典: 近畿レインズ 季刊市況トレンドレポート2026年4〜6月期)。単価は明確に上がっています。

ただし、規制には売主があまり知らない側面があります。それは既存の建物を建て替えるときにも効いてくるという点です。ここを押さえずに「新築が建たないから希少価値が上がる」とだけ考えるのは、判断材料として不十分です。この記事では規制の正確な中身と、売却の判断にどう使うかを整理します。


神戸市のタワマン規制の正確な中身

まず、この規制は「タワーマンションを名指しで禁止したもの」ではありません。正式には特別用途地区「都心機能誘導地区」の指定であり、根拠は「神戸市民の住環境等をまもりそだてる条例」です。2019年(平成31年)3月5日に都市計画決定され、2020年7月1日から制限が始まりました(出典: 前掲の神戸市ページ)。

地区は2種類に分かれ、制限の強さが違います。

地区の種類住宅等に関する制限敷地面積の条件
都心機能高度集積地区住宅等の建築を禁止敷地面積に関わらず適用
都心機能活性化地区住宅等の用途に供する部分の容積率が10分の40(400%)を超える建物は建築禁止敷地面積1,000平方メートル以上のみ適用

区域の広さは、住宅を建てられない都心機能高度集積地区がJR三ノ宮駅南側の22.6ヘクタール、容積率制限がかかる区域が新神戸駅から神戸駅までの約292ヘクタールと報じられています(出典: 神戸新聞NEXT 神戸市都心部のタワマン規制、条例改正から3年)。

ここで注意したいのが「住宅等」の定義です。対象は一戸建てや共同住宅だけでなく、兼用住宅、寄宿舎、下宿、さらに老人ホームや有料老人ホームなどの入所施設も含まれます(出典: 神戸市 都心機能誘導地区 制限概要)。タワーマンションだけの話ではない、というのが正確な理解です。

敷地1,000平方メートル未満のマンションは対象外

見落とされやすいのが、活性化地区では敷地面積1,000平方メートル未満なら容積率の制限がかからないという点です。三宮や元町の周辺には、狭い敷地に建つ中小規模のマンションが数多くあります。こうした敷地では規制後も住宅を建てられるため、「規制区域だから新築が一切ない」というのは言い過ぎになります。

なお、この制限について神戸市への届出は必要ありません。建築確認の中で判断される仕組みです。

規制後、神戸市の中古マンション市場はどう動いたか

規制の効果を語るときに、街の見た目や空きテナントの印象で判断するのは危険です。売主が見るべきは成約の数字です。

近畿レインズが公表している神戸市の中古マンションの動向は次のとおりです。

項目2026年1〜3月期2026年4〜6月期
成約件数703件(前年比プラス7.2%)695件(前年比プラス6.9%)
成約平方メートル単価42.47万円(前年比プラス3.3%)41.01万円(前年比プラス9.9%)
平均成約価格2,968万円(前年比プラス4.5%)2,782万円(前年比プラス7.8%)
平均専有面積69.90平方メートル67.85平方メートル(前年比マイナス1.9%)
平均築年数29.32年30.10年

(出典: 前掲の近畿レインズ2026年4〜6月期レポート、および2026年1〜3月期レポート

【図表1:神戸市の中古マンション 成約平方メートル単価41.01万円(前年比プラス9.9%)と平均成約価格2,782万円 出典:近畿レインズ2026年4〜6月期】

この表の読み方には注意が必要です。平均成約価格は1〜3月期の2,968万円から4〜6月期の2,782万円へ下がっていますが、これは相場が下落したという意味ではありません。同じ期間に平均専有面積が69.90平方メートルから67.85平方メートルへ縮んでいます。狭い住戸の取引が増えれば、平均価格は下がります。

物件そのものの価値がどう動いたかを見るなら、面積の影響を除いた平方メートル単価を見ます。こちらは前年同期比プラス9.9%です。売主が根拠として使うべきなのは、平均価格ではなく単価のほうです。

具体的な計算例:築30年・70平方メートルの住戸

数字を自分の物件に当てはめてみます。専有面積70平方メートル、築30年前後のマンションを想定します。

  • 2026年4〜6月期の神戸市の成約単価で計算:41.01万円 × 70平方メートル = 約2,871万円
  • 1年前の水準(41.01万円 ÷ 1.099 = 約37.32万円)で計算:37.32万円 × 70平方メートル = 約2,612万円
  • 差額:約259万円

1年待ったことで約259万円分の差がついた計算になります。もちろんこれは市全体の平均であり、区・駅距離・管理状態で結果は大きく変わります。あくまで「単価の伸びがどの程度の金額差になるか」の感覚をつかむための試算として使ってください。区ごとの傾向は神戸市のマンション売却相場で詳しく整理しています。

売主が知っておくべき「建替え」への影響

ここからが、規制の話であまり語られない部分です。

都心機能誘導地区の制限は、これから建てる新築だけの話ではありません。すでに建っているマンションを建て替えるときにも関係します。

制限概要には、既存建築物の扱いとして次の内容が示されています(出典: 前掲の神戸市 制限概要)。

  • 基準時(条例施行時である2020年7月1日)に存在する建物を除却して建て替える場合、住宅等の用途に供する部分の床面積の合計が基準時より増えないものであれば、制限は適用されない
  • 増築・改築は、増築後の床面積の合計が基準時の1.2倍を超えないことなど、一定の条件を満たす場合に可能
  • 大規模な修繕・模様替は、用途の変更を伴わない場合に限り可能

つまり、同じ規模での建替えは可能ですが、住戸を増やして建て替えることは原則としてできません。

これが売主にとって何を意味するか。マンションの建替えは、多くの場合「容積率に余裕を持たせて住戸を増やし、増えた分を分譲して工事費に充てる」という方法で成立してきました。この余剰床を作れないとなると、建替え費用は基本的に区分所有者の負担になります。

したがって規制区域内の古いマンションでは、修繕積立金が十分に積み上がっているかどうかの重要性が、他のエリアより高くなります。買主が慎重な場合、長期修繕計画と積立金の残高を必ず見ます。売却前に管理組合から資料をそろえておくと、交渉での立場が変わります。積立金の値上げが売却に与える影響は修繕積立金の値上げとマンション売却でも触れています。

「新築が建たないから高く売れる」と単純化しない

規制によって都心部の新築供給が絞られたことは事実です。市内のタワーマンションは74棟あり、うち規制エリアには21棟が存在しますが、条例改正後に建てられたケースはないと報じられています(出典: 前掲の神戸新聞NEXT)。

供給が絞られれば、既存の物件の希少性は上がります。実際に単価は伸びています。一方で、次の2つの材料も同時に見ておく必要があります。

  1. 神戸市全体の人口は減少局面にある — 市の人口は2023年10月に22年ぶりに150万人を下回ったと報じられています(出典: 前掲の神戸新聞NEXT)。需要そのものが増えているわけではありません。
  2. 建替えの選択肢が狭い — 前述のとおり、余剰床を作る建替えは想定しにくくなります。築年数が進むほど、この制約が買主の判断材料に入ってきます。

この2つを踏まえると、規制区域内の物件について言えるのは「希少性というプラス材料と、将来の建替え制約というマイナス材料が同居している」ということです。築年数が浅いうちほどプラス材料が効き、古くなるほどマイナス材料が重くなる構造だと考えると、判断しやすくなります。築年数と売却時期の関係は築古マンションを売る方法で整理しています。

自分の物件が規制区域内かを確認する方法

区域は道路の境界から30メートルといった細かい単位で線が引かれており、住所だけでは判断できません。神戸市は区域を地図で公開しています。

  • 神戸市のホームページで「神戸市都市計画情報」を検索して区域図を確認する
  • 都市局都市計画課の窓口(三宮国際ビル6階)に備え付けの地図で確認する

具体的な建築計画や既存建築物の扱いについては、建築確認申請を出す指定確認検査機関に確認するよう案内されています(出典: 前掲の神戸市 制限概要)。

売却にあたって規制区域内であること自体を告知する義務が生じるわけではありませんが、買主が将来の建替えや増築を検討する可能性がある以上、聞かれたときに答えられる状態にしておくほうが交渉はスムーズです。個別の判断は宅地建物取引業者や建築士に確認してください。

よくある質問

Q. 規制で新築が建たないなら、中古タワーマンションは必ず高く売れますか?

必ずとは言えません。神戸市の中古マンション成約単価は前年比プラス9.9%と伸びていますが、これは市全体の数字であり、規制区域内の物件だけを取り出した統計ではありません。供給が絞られたプラス材料と、建替えの制約や市全体の人口減というマイナス材料が同時に存在します。

Q. 自分のマンションが規制区域内かどうかは、どこで調べられますか?

神戸市のホームページの「神戸市都市計画情報」で区域図を確認できます。窓口は都市局都市計画課(三宮国際ビル6階)です。区域の線は道路境界から30メートルといった単位で引かれているため、住所だけの判断は避けてください。

Q. 規制されているのはタワーマンションだけですか?

いいえ。条例上の対象は「住宅等」で、一戸建て・共同住宅・兼用住宅・寄宿舎・下宿のほか、老人ホームや有料老人ホームなどの入所施設も含まれます。高さではなく用途に対する規制です。

Q. 敷地が小さいマンションでも規制の対象になりますか?

都心機能活性化地区では、敷地面積1,000平方メートル未満の建物には容積率の制限が適用されません。ただし都心機能高度集積地区では敷地面積に関わらず住宅等を建築できません。

Q. 建て替えができなくなったということですか?

そうではありません。2020年7月1日時点に存在した建物を除却して建て替える場合、住宅部分の床面積が基準時より増えなければ制限は適用されません。同規模の建替えは可能で、住戸を増やす建替えが難しくなった、という理解が正確です。


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この記事について

本記事は、不動産売却情報メディア URUMAE 編集部が公表されている制度・法令に基づいて執筆・編集しています。 制度・税率は執筆時点の情報です。個別の税務相談は税理士にご相談ください。

運営者は宅地建物取引士。不動産業界での実務経験15年。

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