結論:想定例の手取りは約1,691.9万円、税金は0円です
「3,000万円で売れたら、ほぼ3,000万円が手元に残るはず」。多くの人が最初にそう考えます。ところが想定例で計算すると、諸費用約108.1万円とローン残債1,200万円を引いた手取りは約1,691.9万円です。だから、売り出し価格ではなく手取りで考えることが大切です。
- 売却価格:3,000万円
- 諸費用合計:約108.1万円(仲介手数料105.6万円+印紙税1万円+抵当権抹消約1.5万円)
- 譲渡所得税:0円(3,000万円特別控除を適用できた場合)
- ローン完済:1,200万円
- 最終手取り:約1,691.9万円
ただし、この「税金0円」は条件次第で変わります。とくに購入時の売買契約書が見つからないと、同じ売却でも数百万円の税金がかかる場合があります。
この記事では、費用・税金・手取りの計算を順に追い、結果が分かれる点を、マンションの売却を考えている人に向けて整理します。
想定例は「所有12年のマイホーム・残債1,200万円」です
本記事の計算は、よくある条件を組み合わせた想定例です。特定の実在する取引ではありません。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 売却価格 | 3,000万円 |
| 住宅ローン残債 | 1,200万円 |
| 購入時の価格(取得費) | 2,800万円 |
| 所有期間 | 12年(10年超) |
| 利用状況 | マイホーム(自分が住んでいた居住用財産) |
つまり、税制上は所有5年超の「長期譲渡所得」にあたります。そのうえ、3,000万円特別控除や10年超所有の軽減税率の対象にもなり得る条件です。
諸費用は約108.1万円で、ほとんどが仲介手数料です
まず、税金以外の諸費用を確かめます。合計は売却価格の約3.6%です。
| 項目 | 金額 | 計算根拠 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 105.6万円 | (3,000万円×3%+6万円)×消費税1.1 |
| 印紙税 | 1万円 | 売買価格1,000万円超〜5,000万円以下の軽減税率(2027年3月31日までの契約) |
| 抵当権抹消費用 | 約1.5万円 | 登録免許税2,000円(土地・建物各1,000円)+司法書士報酬1〜2万円程度の目安 |
| 合計 | 約108.1万円 | 売却価格の約3.6% |
仲介手数料は、宅建業法で決まる上限の速算式「売買価格×3%+6万円+消費税」で計算しています。3,000万円×3%+6万円=96万円に、消費税を加えて105.6万円です。
抵当権抹消費用は、ローンの担保(抵当権)を登記簿から消すための費用です。登録免許税は不動産1件につき1,000円で、マンションは建物と敷地権で通常2,000円です。そこに司法書士の報酬1〜2万円程度を足して、約1.5万円を見込みます。
なお、ローンの一括返済手数料(金融機関により数千円〜数万円)は、この計算では省略しています。ほかの費用も確かめたいなら、マンション売却の諸費用 全一覧で項目ごとに整理しています。
契約書があれば、譲渡益93.4万円は控除内で税金0円です
譲渡所得税は、売却で利益(譲渡益)が出たかどうかで決まります。計算は次の3段階です。
- 譲渡所得=売却価格−取得費(購入代金等)−譲渡費用(仲介手数料・印紙税等)
- 課税譲渡所得=譲渡所得−特別控除(マイホームなら最大3,000万円)
- 税額=課税譲渡所得×税率
【計算例】想定例では、購入価格2,800万円を売買契約書で証明できるとします。
- 譲渡所得=3,000万円−2,800万円−106.6万円(仲介手数料105.6万円+印紙税1万円)=93.4万円
- 課税譲渡所得=93.4万円−3,000万円特別控除→0円
- 譲渡所得税:0円
マイホームの売却では、要件を満たせば譲渡益から最大3,000万円を差し引けます(出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例)。だから、譲渡益93.4万円は控除の範囲に収まり、税金はかかりません。
厳密には、建物の減価償却(経年で価値が減った分)を取得費から差し引くため、譲渡益はもう少し増えます。とはいえ控除枠には遠く及ばないので、結論は変わりません。
ただし、税額が0円でも、この控除を使うには売却翌年の確定申告が必要です。
【注意】契約書がなく控除も使えないと、税金は約557万円です
購入時の売買契約書をなくして取得費を証明できないと、税務上は売却価格の5%(概算取得費)しか認められません(出典: 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき)。
- 概算取得費=3,000万円×5%=150万円
- 譲渡所得=3,000万円−150万円−106.6万円=2,743.4万円
つまり、実際は2,800万円で買ったのに、計算上は2,743.4万円の「利益」が出たことになります。そのうえで、3,000万円特別控除が使えるかどうかで税額が分かれます。
表は横にスクロールできます →
| 契約書 | 特別控除 | 課税譲渡所得 | 税額(20.315%) |
|---|---|---|---|
| あり | 使える | 0円 | 0円 |
| あり | 使えない | 93.4万円 | 約19万円 |
| なし | 使える | 0円 | 0円(控除枠をほぼ使い切る) |
| なし | 使えない | 2,743.4万円 | 約557万円 |
税率は長期譲渡所得の20.315%(所得税15.315%+住民税5%)です。控除が使えない例は、住まなくなってから3年目の年末を過ぎていた場合や、賃貸に出して要件を満たさない場合です。
控除が使えないとき、契約書の有無による差は約538万円です。だから、契約書は査定を頼む段階で探し始めます。まず権利証(登記識別情報)と一緒の書類袋を見ます。なければ、購入時の不動産会社や分譲主、ローンを組んだ金融機関に写しや記録を照会します。
また、分譲時のパンフレットや通帳の出金記録が、取得費の立証に役立つ場合もあります。
まとめ:手取りは「売却価格−諸費用−税金−残債」で決まります
最後に、ローン残債を引いて手取りを確定させます。想定例(契約書あり・税金0円)の計算です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 3,000万円 |
| 諸費用合計 | −約108.1万円 |
| 譲渡所得税 | 0円 |
| ローン残債の完済 | −1,200万円 |
| 最終手取り | 約1,691.9万円 |
決済(代金の受け渡し)の当日は、受け取った代金でローンを一括返済します。そのうえで抵当権を抹消し、引き渡すのが通常の流れです。管理費などの日割り精算は数千円〜数万円規模のため、この計算では省略しています。
ということで、契約書があるマイホームなら、想定例の手取りは約1,691.9万円です。一方、契約書がない人や控除の要件に不安がある人は、税金の分を先に見込んでおきます。なお、本記事の税額は概算で、個別の判断は税理士に確かめてください。
売値ではなく手取りで決める
今日できることは次の3つです。
- 購入時の売買契約書を探す
- ローン残高を返済予定表で確かめる
- 住まなくなった時期と、賃貸に出したことの有無を書き出す
続けて読むなら、マンション売却の諸費用 全一覧です。
よくある質問
Q. 税金が0円なら、確定申告はしなくてもいいですか?
3,000万円特別控除を使う場合は、税額が0円でも売却翌年の確定申告が必要です。「税金がかからないなら申告不要」ではない点は、特に誤解が多いところです。
Q. 購入時の売買契約書が見つからないと、どうなりますか?
取得費を証明できないと、売却価格の5%(3,000万円なら150万円)しか取得費として認められません。想定例で3,000万円特別控除が使えない場合、契約書の有無による税額の差は約538万円になります。査定を依頼する段階で探し始めてください。
Q. 諸費用のうち、いちばん大きいのは何ですか?
仲介手数料です。上限は「売買価格×3%+6万円+消費税」で、3,000万円なら105.6万円になり、諸費用の合計約108.1万円の大部分を占めます。
あなたの条件では結果が変わります
今回の想定例では手取り約1,692万円・税金0円でしたが、これはあくまでひとつのモデルケースです。売却価格が違えば仲介手数料も印紙税も変わりますし、ローン残債の額、所有期間、契約書の有無、居住用かどうかで、手取りは数十万円から数百万円単位で動きます。
URUMAEの手取り計算ツールなら、ご自身の条件を入力するだけで、費用と手取りの目安をその場で確認できます。売り出し価格を決める前に、まず手取りベースで考えてみてください。
諸費用の全項目を確認したい方はマンション売却の諸費用 全一覧を、相続したマンションの売却を検討中の方は相続シミュレーターもご覧ください。
※本記事の税額は一般的な試算です。個別の税務相談は税理士にご相談ください。

