結論:土地売却で最も時間がかかる工程です。査定と同時に着手してください
土地や戸建てを売るとき、買主から確定測量図の提出を求められるのが一般的です。そしてこれが売却全体で最も時間のかかる工程になります。
費用と期間の目安を先に示します。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 費用(官民立会いあり=道路等の官有地に接する) | 70万円程度 |
| 費用(官民立会いなし=民有地のみに接する) | 35〜50万円程度 |
| 期間 | 1か月半〜3か月程度 |
| 隣地の協力が得られない場合 | 筆界特定制度で6か月〜1年 |
不動産の売却期間は平均で3か月前後です(不動産売却にかかる期間の平均)。測量にも3か月かかるということは、測量を後回しにすると売却期間が単純に倍近くになるということです。
「買主が決まってから測量すればいい」という進め方は、実務ではおすすめできません。この記事では、なぜ確定測量が必要なのか、いつ着手すべきか、そして隣地ともめた場合の公的な解決手段までを整理します。
そもそも「確定測量図」とは何か
土地の図面には複数の種類があり、名前が似ているため混同されがちです。買主が求めるのは確定測量図であり、他の図面では代わりになりません。
| 図面の種類 | 内容 | 隣地の同意 |
|---|---|---|
| 確定測量図(境界確定測量図) | すべての境界について隣接所有者と立会い・合意し、境界確認書を取り交わしたもの | 必要 |
| 現況測量図 | 現地のブロック塀や既存の杭をもとに測っただけのもの | 不要 |
| 地積測量図(法務局備付け) | 分筆等の際に法務局に提出された図面。古いものは精度が低い | 作成時期による |
| 公図 | 位置関係を示す参考図。寸法の正確性は担保されない | — |
自宅に「測量図」があるからといって、それが確定測量図とは限りません。確定測量図には隣接所有者の署名押印がある境界確認書がセットになっているのが特徴です。
なぜ買主は確定測量図を求めるのか
理由は3つあります。
1つ目は、面積が確定しないと価格が決まらないこと。登記簿上の面積(公簿面積)と実際の面積(実測面積)は一致しないことがあります。古い土地では登記簿の方が小さい(縄伸び)、あるいは大きい(縄縮み)ケースがあります。
2つ目は、買主が将来売るときや建てるときに困ること。境界が不明確な土地は、建築確認や住宅ローンの審査、将来の再売却で支障になります。
3つ目は、境界紛争を引き継ぎたくないこと。隣地とのもめごとがある土地を、わざわざ買う人はいません。
売主側から見れば、確定測量図があることは「境界の問題はありません」という証明になり、価格交渉での防御にもなります。逆に無いと、値引き交渉の材料にされます。
契約方式にも関わります
売買契約では、面積の扱いを次のいずれかで定めます。
- 公簿売買 — 登記簿の面積で取引し、実測との差があっても精算しない
- 実測売買 — 実測面積で精算する(1㎡あたりの単価を定めておく)
実測売買を選ぶなら確定測量は必須です。公簿売買であっても、境界の明示は売主の義務とされるのが一般的で、結局は境界の確認が必要になります。
確定測量の流れ
土地家屋調査士に依頼します。おおまかな流れは次のとおりです。
- 資料調査 — 法務局の公図・地積測量図、市区町村の道路台帳などを収集します
- 現況測量 — 現地の状況を測ります
- 境界の仮定 — 資料と現況をもとに、本来あるべき境界(筆界)を推定します
- 官民境界の確認 — 道路や水路など官有地に接する場合、市区町村や国と立会いを行います。ここが最も時間がかかります
- 民民境界の立会い — 隣接する土地所有者と現地で立会い、境界を確認します
- 境界確認書の取り交わし — 合意内容を書面にし、署名押印をもらいます
- 境界標の設置 — 現地に杭やプレートを設置します
- 図面作成 — 確定測量図を作成します。必要に応じて地積更正登記や分筆登記を行います
期間が読めない理由
官民立会いの日程が行政の都合で決まること、そして隣接所有者の都合と協力が必要なことです。隣地が相続で共有になっていたり、所有者が遠方だったり、連絡がつかなかったりすると、そこで止まります。
「1か月半〜3か月」という目安は、順調に進んだ場合の数字です。隣地が空き家で所有者が不明といったケースでは、さらに時間がかかります。
隣地の協力が得られないとき:筆界特定制度
隣地の所有者が立会いを拒否する、境界の位置で合意できない、といった場合の公的な手段が筆界特定制度です。不動産登記法131条以下に規定されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施主体 | 法務局の筆界特定登記官(外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえる) |
| 申請できる人 | 土地の所有者が単独で申請可能(隣地の同意は不要) |
| 期間 | 6か月〜1年程度 |
| 費用 | 申請手数料は土地の価格で決まる。別途、測量費用の予納が必要 |
| 境界確定訴訟との比較 | 訴訟は1〜3年。筆界特定の方が簡易・迅速 |
最大の利点は、隣地の同意がなくても一方の所有者が単独で申請できることです。立会いを拒否されて手詰まりになった場合の出口になります。
ただし、売却スケジュールへの影響は大きいと考えてください。6か月〜1年かかるということは、その間は事実上売却活動ができません。境界に不安がある土地は、売る予定が立った時点ですぐ動くべき理由がここにあります。
いつ着手すべきか:売却の逆算
売却を決めたら、次の順序で進めるのが実務的です。
- 手元の資料を確認する — 過去の測量図、境界確認書、公図を探します。確定測量図が既にあれば、作成時期を確認します(古すぎると再測量を求められることがあります)
- 現地で境界標を確認する — 敷地の四隅に杭やプレートがあるか見ます。無い、動いている、埋まっているなら要注意です
- 査定と同時に土地家屋調査士へ相談する — 机上査定・訪問査定を受ける段階で、測量の要否と概算を確認します
- 隣地との関係を確認する — 過去にもめた経緯があるか、隣が空き家や相続未了でないかを把握します
- 売り出しと並行して測量を進める — 測量完了を待って売り出すと機会損失になります。並行が基本です
費用の位置づけ
35〜70万円という金額は決して小さくありませんが、不動産売却にかかる費用の中で見ると、仲介手数料に次ぐ規模です。ただし、確定測量図がないことによる値引き要求の方が大きくなることが少なくありません。境界不明を理由に数百万円単位で指値が入るケースもあります。
また、測量費用は譲渡所得の計算上譲渡費用に算入できるとされており、税額を下げる効果があります。詳しくは譲渡所得税の計算をご覧ください。
よくある質問
Q. マンションを売るときも必要ですか?
不要です。確定測量が問題になるのは土地(更地・戸建ての敷地)です。マンションは敷地権として共有持分を持つ形になっており、個別の測量は求められません。
Q. 昔の測量図があります。使えますか?
作成時期と内容によります。隣接所有者の署名押印がある境界確認書がセットになっているかが判断の分かれ目です。また、平成17年以降の地積測量図は世界測地系にもとづく精度の高いものですが、それ以前のものは精度が劣るため、買主や金融機関が再測量を求めることがあります。
Q. 隣が空き家で所有者と連絡がつきません。
まず登記事項証明書で所有者を確認し、住所地に連絡を試みます。既に亡くなっていて相続登記がされていない場合は、相続人を調査する必要があります。それでも進まない場合は筆界特定制度が選択肢になります。なお、隣地が管理不全空家の状態なら、市区町村が所有者を把握している可能性があります。
Q. 費用は誰が負担しますか?
売主負担が一般的です。売主には境界を明示する義務があるという実務慣行にもとづきます。ただし、隣地との共同での測量になる場合は費用分担を協議することもあります。
Q. 測量せずに売る方法はありませんか?
あります。公簿売買かつ現況有姿での売却、または買取業者への売却です。ただしいずれも価格は下がります。買主が境界のリスクを引き受ける分、その分が価格に反映されるためです。時間を優先するか価格を優先するかの判断になります。早く売る方法もあわせてご覧ください。
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※費用と期間は土地の形状・面積・隣接状況で大きく変わります。実際の見積りは土地家屋調査士にご確認ください。
