税金がゼロでも、国保が増える場合があります
「自宅を売って3,000万円特別控除を使えば、翌年も安心でしょうか」。国民健康保険に加入している方は、もう一段確認が必要です。所得に応じてかかる保険料と、低所得世帯向けの軽減では、譲渡所得の扱いが違うからです。
売却で利益が出ると、原則として売却した年の翌年度の国保保険料に反映されます。2026年中の売却なら、確認するのは2027年度分です。松山市の公式FAQも、翌年度への影響を案内しています。
売却代金を使う前に、税金とは別の支払いを見積もっておきましょう。
売却代金ではなく、税務上の利益から確認する
土地・建物の譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を引いて求めます。ローンを返した後の手取りとは別物です。建物の取得費は、購入額から減価償却費相当額を差し引くため、買った値段をそのまま使えません。国税庁の計算方法で確認できます。
次は、特別控除の効果を見るための仮の例です。取得費などは税務上確認済みとします。
| 計算するもの | 仮の金額 |
|---|---|
| 売却代金 | 3,000万円 |
| 取得費・譲渡費用の合計 | 2,200万円 |
| 特別控除前の譲渡所得 | 800万円 |
| 自宅の特別控除を適用できる場合の控除額 | 800万円 |
| 特別控除後の譲渡所得 | 0円 |
3,000万円控除は、3,000万円を受け取れる制度ではありません。要件を満たす譲渡所得から最高3,000万円を差し引く特例です。この例の控除額は800万円で、適用には確定申告が必要です。国税庁・マイホーム売却の特例
所得割と軽減判定を分けて試算する
国保の所得割では、土地・建物の譲渡所得は特別控除後の金額を使います。上の例なら、譲渡所得として加算される金額はゼロです。ただし、それだけで保険料全体が据え置きになるとは言えません。
たとえば神戸市の法定減額制度では、人数などに応じた均等割・平等割の軽減判定に、特別控除前の譲渡所得を使います。上の例では800万円が判定に入り、従来受けていた軽減が外れる場合があります。
世帯主が国保に加入していなくても、その所得が判定に関係します。
所得割の基礎控除額も、合計所得金額によって変わります。「控除後ゼロだから国保への影響もゼロ」とせず、世帯全体で試算してください。
自治体へは「売る場合・売らない場合」の2通りを聞く
料率や計算方法は自治体・年度によって異なり、加入者の年齢や人数、加入月数でも金額が変わります。神戸市の保険料案内も、年度別の試算と区分別の上限を示しています。2026年度の料率を、そのまま2027年度の確定額として使うことはできません。
市区町村の国保窓口に、次の情報をそろえて相談すると比較しやすくなります。
- 売却予定年と、特別控除前・控除後の譲渡所得
- 給与・年金・事業など、売却以外の年間所得の見込み
- 世帯員の年齢・加入保険と、退職などで国保に入る予定月
「売却した場合と、しなかった場合の保険料を、軽減の変化も含めて比べたい」と伝えてください。翌年度の料率が未定なら現行制度で仮計算し、決定後に見直します。その差額を、売却後に残す資金の目安にできます。
注意:会社の健康保険と、家族の扶養は別に確認する
勤務先の健康保険に本人として加入している場合、保険料は基本的に給与・賞与をもとに計算します。不動産の譲渡所得を国保と同じように加算する仕組みではありません。協会けんぽ・費用の負担
一方、家族の健康保険の被扶養者である場合は、資格判定を加入先へ確認します。一回限りの不動産売却収入を除外できると案内する健康保険組合の例もありますが、その扱いを全加入先へ当てはめないでください。税法上の扶養とも判定が違います。退職後に国保へ切り替える予定があれば、前年の売却益が反映される年度も併せて確認します。
国保の増減も、売却後に残す資金へ含めます。
次は不動産売却後の確定申告で、控除を受ける手続きを整理できます。
よくある質問
Q. 翌々年度には必ず元の保険料へ戻りますか?
一度だけの売却益は、通常、その翌年度の算定に反映されます。ただし他の所得、料率、年齢、世帯構成も変わるため、以前と同じ金額に戻るとは限りません。
Q. 複数物件の売却年を分ければ安くなりますか?
一概には言えません。年間上限までの負担が複数年続き、合計が増える場合もあります。上限は控除枠ではありません。税金も含め、各年の総額で比較します。
Q. 75歳以上でも、この国保の計算を使いますか?
後期高齢者医療制度の加入者は別制度です。国保の料率表を使わず、加入先に確認してください。
訂正(2026年9月23日):売却年の分散を負担軽減策として推奨した説明を撤回し、特別控除後ゼロでも軽減判定などに影響する点を追記しました。分離課税が一律に低税率になるとの表現も訂正しています。

