費用・税金2026年8月2日

不動産を売った翌年に国民健康保険料が跳ね上がる|神戸市の料率で試算する

国民健康保険料譲渡所得分離課税賦課限度額神戸市

最終更新:

結論:所得税とは別に、翌年の国民健康保険料が上がります

不動産を売って利益が出たとき、多くの方が確認するのは譲渡所得税です。しかし見落とされやすく、金額のインパクトが大きいのが国民健康保険料です。

仕組みはこうです。譲渡所得は所得税の計算では分離課税として、給与などとは切り離して低い税率で課税されます。ところが、国民健康保険料の算定では分離課税の扱いは関係なく、譲渡所得がそのまま算定の基礎に入ります

神戸市も公式に、保険料の算定用所得額には分離課税対象所得(土地・建物の譲渡所得など)が含まれると明示しています(神戸市「国民健康保険料の額」)。

対象になるのは、国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入している方です。会社の健康保険(協会けんぽ・組合健保)に加入している方は、保険料が標準報酬月額で決まるため、この影響を受けません。

自営業の方、年金生活の方、退職して国保に切り替えた方が該当します。この記事では、神戸市の実際の料率を使って金額を試算します。


神戸市の令和8年度(2026年度)保険料率

まず前提となる数字を確認します。以下は神戸市が公表している令和8年度の料率です。

区分所得割均等割(1人)平等割(1世帯)限度額
医療分7.38%33,700円21,800円670,000円
後期高齢者支援金分2.97%13,510円8,740円260,000円
介護分(40〜64歳)2.78%13,970円6,880円170,000円
子ども・子育て支援金分0.26%1,280円(18歳以上は1,330円)830円30,000円
【図表1:神戸市の令和8年度国民健康保険料率。所得割は40〜64歳で合計13.39%、賦課限度額は4区分合計113万円 出典:神戸市】

所得割の合計は、40〜64歳の方で 7.38+2.97+2.78+0.26 = 13.39% です。40歳未満・65歳以上(介護分がかからない層)では 10.61% となります。

そして賦課限度額の合計は 67+26+17+3 = 113万円です。ここが上限になります。

なお、保険料の算定の基礎となる「算定用所得額」は、各種所得から基礎控除額(合計所得金額に応じて43万円〜0円)を差し引いた額とされています。


実際にいくら増えるのか:3つのケースで試算

ケース1:譲渡所得500万円(3,000万円控除が使えない場合)

自営業・50歳・単身世帯、事業所得は300万円とします。

算定用所得額は、売却しない年が 300万-43万=257万円、売却した年が 800万-43万=757万円です。区分ごとに限度額があるため、区分別に計算します。

区分売却しない年売却した年
医療分約24.5万円約61.4万円
後期高齢者支援金分約9.9万円約24.7万円
介護分約9.2万円17.0万円(限度額に到達)
子ども・子育て支援金分約0.9万円約2.2万円
年間保険料の合計約44万円約105万円

差額は約61万円です。譲渡所得税とは別に、これが翌年度に請求されます。

なお、この段階ですでに介護分は限度額17万円に達しています。限度額は区分ごとに設定されているため、所得が増えると到達した区分から順に頭打ちになります。

ケース2:譲渡所得1,500万円

同じ条件で譲渡所得が1,500万円の場合、算定用所得額は1,757万円です。所得割だけで計算すると医療分129.7万円・支援分52.2万円・介護分48.8万円・子育て分4.6万円となり、4区分すべてが限度額に到達します。したがって年間保険料は限度額の合計である113万円です。

つまり、譲渡所得が大きくなるほど「上限に張り付く」構造です。逆に言えば、上限を超える部分ではこれ以上増えません

ケース3:マイホームを売って3,000万円特別控除を使った場合

ここが重要です。神戸市を含む多くの自治体で、保険料の算定基礎となる譲渡所得は特別控除を適用した後の金額です。

譲渡所得が2,500万円でも、3,000万円特別控除を適用して課税譲渡所得がゼロになれば、国民健康保険料への影響もありません

ケース控除前の譲渡益控除後保険料への影響
マイホーム売却・控除適用2,500万円0円なし
相続した空き家・要件を満たす2,000万円0円なし
投資用物件・控除なし500万円500万円大きい
相続した空き家・要件を満たさない2,000万円2,000万円上限まで

3,000万円特別控除が使えるかどうかが、保険料の分かれ目になります。マイホームなら多くの場合カバーされますが、投資用物件や、要件を満たさない相続空き家では直撃します。


見落とされやすい連鎖:保険料だけでは終わらない

譲渡所得が算定基礎に入ることで、保険料以外にも影響が及ぶことがあります。

  • 後期高齢者医療制度の保険料 — 同じく所得で算定されます
  • 介護保険料 — 65歳以上の方は所得段階で決まるため、段階が上がる可能性があります
  • 医療費の自己負担割合 — 所得によって1割・2割・3割が変わります。窓口負担が3割になることがあります
  • 高額療養費の自己負担限度額 — 所得区分が上がると、上限額も上がります
  • 各種の所得制限がある給付 — 保育料など、所得を基準にするものに影響し得ます

療養中の方が売却する場合は特に注意が必要です。保険料が上がるだけでなく、窓口負担割合が上がって医療費そのものが増える可能性があります。


影響を抑えるための考え方

1. まず3,000万円特別控除が使えるか確認する

最も効果が大きい対策です。マイホーム(居住用財産)であれば適用できる可能性が高く、住まなくなった家でも住まなくなった日から3年目の12月31日までであれば対象になり得ます。相続した空き家についても要件を満たせば同様の控除があります。売却の手取りを増やす節税もご覧ください。

2. 売却する年を分ける(複数物件がある場合)

複数の物件を売る予定があるなら、同じ年にまとめて売ると賦課限度額を無駄に使うことになります。別々の年に分けることで、限度額の枠を2年分使える場合があります。ただし譲渡所得税や市況の兼ね合いもあるため、税理士に相談してください。

3. 会社の健康保険に加入している場合は影響しない

前述のとおり、協会けんぽ・組合健保は標準報酬月額で保険料が決まるため、譲渡所得の影響を受けません。退職して国保に切り替える予定がある方は、切り替えのタイミングと売却時期の関係を確認しておくと良いでしょう。

4. 翌年の資金を残しておく

これが実務上いちばん重要です。売却代金を全額使ってしまい、翌年の保険料と譲渡所得税で資金が足りなくなるというケースが実際にあります。

売却の翌年に発生する支払いを時系列で押さえてください。

時期支払うもの
売却の翌年2月16日〜3月15日所得税(譲渡所得税)の確定申告・納付
売却の翌年6月ごろ〜住民税の納付開始
売却の翌年6月ごろ〜国民健康保険料の決定通知・納付開始

住民税については売却後の住民税はいつ払うのか、確定申告の手順は不動産売却後の確定申告で解説しています。


よくある質問

Q. 売った翌年だけですか?その後も続きますか?

翌年度の1年間だけです。保険料は前年の所得で算定されるため、譲渡所得がなくなれば翌々年度には元の水準に戻ります。

Q. 損失が出た場合はどうなりますか?

譲渡損失が出た場合、算定基礎への上乗せはありません。マイホームの譲渡損失については損益通算・繰越控除の特例がある場合もあります。売却で損が出たときの税金をご覧ください。

Q. 確定申告をしなければ保険料に反映されませんか?

確定申告の内容が市区町村に共有されて保険料が算定されます。申告義務がある譲渡所得を申告しないことは脱税にあたります。3,000万円特別控除も申告して初めて適用されるものであり、申告しなければ控除が受けられません。

Q. 神戸市以外でも同じですか?

料率は自治体ごとに異なりますが、譲渡所得が算定基礎に含まれる点、賦課限度額がある点は共通の仕組みです。お住まいの市区町村の料率を確認してください。

Q. 保険料を減らす方法はありますか?

災害・失業・所得の著しい減少などの事由がある場合、減免制度が用意されている自治体があります。ただし不動産売却による一時的な所得増は通常の減免事由には当たりません。売却前の設計(控除の適用、売却年の分散)で対処するのが基本です。


売る前に、手取り額を知っておきませんか

不動産売却は、売る前の準備で決まります。URUMAEの無料ツールなら、査定前に自分で概算をつかめます。

※本記事の試算は神戸市の令和8年度料率にもとづく概算です。実際の保険料は世帯構成・軽減措置・所得の内訳で変わります。最終判断は市区町村の国民健康保険担当課・税理士にご確認ください。

この記事について

本記事は、不動産売却情報メディア URUMAE 編集部が公表されている制度・法令に基づいて執筆・編集しています。 制度・税率は執筆時点の情報です。個別の税務相談は税理士にご相談ください。

運営者は宅地建物取引士。不動産業界での実務経験15年。

運営者情報を見る

売る前に、まず相場を確かめる

査定を依頼する前に自分で相場の見当をつけておくと、各社の査定額が妥当かどうかを判断できます。 国土交通省が公開している実際の取引データをもとに、町丁目別の相場を無料で公開しています。

町丁目別の相場を見る

関連記事