費用・税金

不動産を売って損したら税金はどうなる?損益通算と繰越控除の使い方【2026年版】

家の模型が下がった天秤と戻される硬貨をペン画と淡い水彩で描いたイラスト

結論:売却損で給与の税金が戻るのは、所有5年超のマイホームだけです

「買った値段より安く売ったのだから、給与の税金も少しは戻るはず」。多くの人が最初にそう考えます。ところが投資用マンションを300万円損して売っても、給与の税金は原則1円も安くなりません(出典: 国税庁 No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合)。

ただし、マイホームには例外の特例が2つあります。買い換えた場合と、住宅ローンが残る場合です。どちらも損失を給与所得と相殺でき、引ききれない分は翌年以後3年間繰り越せます。

なお、購入価格との差額がそのまま税務上の損失になるとは限りません。建物の取得費は、購入代金などから減価償却費相当額を差し引いて計算するためです(出典: 国税庁 No.3261 建物の取得費の計算)。とはいえ計算の結果が損失なら、その売却の譲渡所得に所得税・住民税はかかりません。

この記事では、2つの特例の要件の違いと損失1,800万円の計算例を、自宅を損して売る会社員に向けて整理します。

原則:自宅以外の売却損は、給与と相殺できません

所得税には、赤字の所得を黒字の所得とぶつけて減らす「損益通算」という仕組みがあります(出典: 国税庁 No.2250 損益通算)。しかし土地・建物の譲渡所得は分離課税(給与などとは別枠で計算する方式)です。そのため、損失の扱いは次のとおり限られます。

  • 同じ年に別の土地・建物の譲渡益があれば、その内部でだけ相殺できる
  • 給与所得・事業所得など他の所得とは通算できない
  • 翌年への繰越も原則なし

つまり、投資用物件の損失はその年の不動産同士でしか使えません。だから次に見るのは、マイホームだけに認められた2つの特例です。

買換えなら損失の全額、買い換えないなら「残債−売却価格」が上限です

買換えの特例は、自宅を売って損が出て、新しい自宅をローンで買った人向けです(出典: 国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき)。損失の全額を給与所得などと通算できます。売った家のローン残高は問われません。

一方、オーバーローンの特例は、賃貸に移る・実家に戻るなど買い換えない人向けです(出典: 国税庁 No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき)。売却価格が住宅ローン残高を下回る売却が対象です。ただし通算できるのは、売買契約日の前日のローン残高から売却価格を引いた額までです。

項目買換えの特例(No.3370)オーバーローンの特例(No.3390)
対象自宅を売って新たな自宅を買う人自宅を売るがローンが残る人(買換え不要)
売る家の所有期間譲渡年の1月1日で5年超譲渡年の1月1日で5年超
売る家の敷地と損益通算500平方メートルによる制限なし面積制限なし
売る家の敷地と繰越控除500平方メートル超の部分に対応する損失は対象外面積制限なし
売る家のローン不要契約日前日に償還期間10年以上の残高があること
新居の要件床面積50平方メートル以上・取得年末に償還期間10年以上のローンがあり、取得年の翌年末までに入居または入居見込み不要
通算できる損失額譲渡損失の全額ローン残高−売却価格が上限
繰越期間翌年以後3年間翌年以後3年間
繰越年の所得制限合計所得金額3,000万円以下の年のみ合計所得金額3,000万円以下の年のみ
親族への売却適用外適用外

どちらも「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」の売却が対象です。また、売った年の前年・前々年に3,000万円特別控除などの居住用特例を使っていないことも条件です。なお、買換えの特例は新居の住宅ローン控除と併用できます。

計算例:損失1,800万円は、給与所得700万円なら3年目で消えます

損失は、売却年とその後の繰越3年で最大4年分の所得と相殺できます。たとえば2015年に4,900万円で買った自宅を、2026年に2,600万円で売り、新居をローンで買ったケースです(買換えの特例を適用)。

売却価格2,600万円から取得費4,250万円と譲渡費用150万円を引くと、損失は1,800万円です。本人の給与所得は毎年700万円とします。

図表1:譲渡損失1,800万円は給与所得700万円なら3年目で全額消化(売却年+繰越2年)。国税庁の制度説明をもとにURUMAE試算

表は横にスクロールできます →

年分給与所得差し引く損失損失を引いた後の所得翌年へ繰り越す損失
2026年(売却年)700万円700万円0円1,100万円
2027年(繰越1年目)700万円700万円0円400万円
2028年(繰越2年目)700万円400万円300万円0円

売却年は所得が0円になるため、源泉徴収された所得税が確定申告でほぼ全額戻ります。2028年分の300万円は所得控除前の金額です。ここから基礎控除などを差し引いて課税所得を出します(出典: 国税庁 No.1100 所得控除のあらまし)。

さらに翌年度の住民税も下がるため、この例では3年間で合計300万円前後の税負担が軽くなるイメージです。ただし実際の額は扶養控除など他の所得控除で変わるので、個別の金額は税理士・税務署にご確認ください。

【注意】申告を1年抜かすと、残りの損失は繰り越せません

この特例は自動では適用されません。売却した翌年の確定申告(2月16日〜3月15日)で、譲渡損失の計算明細書などを添えて申告します。オーバーローンの特例では、売買契約日前日のローン残高証明書も必要です。

しかも繰越を受ける年は、その後も連続して確定申告が必要です。1年でも申告が抜けると、以後の繰越は使えなくなります。また、繰越できるのは合計所得金額3,000万円以下の年だけです。

そもそも損しているかの判定には、購入時の売買契約書が要ります。契約書がないと取得費が売却価格の5%扱いになり、実際は損なのに利益が出たことになる場合があります。

費用と取得費の全体像はマンション売却の諸費用 全一覧を、税金計算の基本は不動産売却の税金 完全ガイドをご覧ください。

まとめ:自宅を損して売った年こそ、確定申告をしましょう

ということで、新居を買う人は買換えの特例を、ローンが残ったまま賃貸へ移る人はオーバーローンの特例を確かめてください。所有5年以下の家や親族への売却では、どちらも使えません。

損失が出た年も、申告すれば税金は戻り得ます

  • 購入時の売買契約書を探す
  • 売る年の1月1日時点で所有5年を超えるか数える
  • ローンが残るなら、残高証明書の出し方を金融機関に聞く

続けて読むなら、不動産売却後の確定申告は必要?不要?判断基準と申告のやり方です。

訂正(2026年9月23日):購入価格との差額と税務上の譲渡損失を区別しました。買換え特例の500平方メートル制限が繰越控除に関する条件であること、新居の入居期限の基準年を明記しました。計算例の「課税所得300万円」は「所得控除前の所得300万円」へ、図表の消化期間は3年間へ訂正しました。制度改正による変更ではありません。

よくある質問

Q. 投資用マンションの売却損には特例はありませんか?

ありません。2つの特例はいずれも居住用財産(マイホーム)限定です。投資用物件の損失は、同じ年の他の不動産売却益と相殺することだけができます。

Q. 売却損が出た場合、確定申告しないとどうなりますか?

損失だけなら申告義務はなく、罰則もありません。ただし申告しなければ損益通算も繰越控除も受けられず、還付金を放棄することになります。給与所得700万円なら初年度だけで数十万円規模の差になり得るため、要件に当てはまる方は申告を強くおすすめします。

Q. 住み替え先が賃貸でも使えますか?

賃貸に移る場合は買換えの特例(No.3370)は使えませんが、売った家がオーバーローンならNo.3390の特例が使える可能性があります。新居の購入が条件になるのは買換えの特例だけです。

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この記事について

本記事は、不動産売却情報メディア URUMAE 編集部が公表されている制度・法令に基づいて執筆・編集しています。制度・税率は執筆時点の情報です。個別の税務相談は税理士にご相談ください。

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