状況別2026年6月16日

オーナーチェンジ物件の売却方法【賃貸中でも売れる?相場と注意点を解説】

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結論:入居者がいたまま売却できます。ただし買主は投資家になり、価格は「利回り」で決まります

賃貸に出しているマンションや戸建てを売りたいとき、「入居者がいるのに売れるのか」「追い出さないといけないのか」と心配される方が多いのですが、結論は明快です。

  • 入居者がいたまま売却できます。これをオーナーチェンジ(入居者はそのままで所有者だけが変わる売買)と呼びます
  • 賃貸借契約は、法律上、買主に自動的に引き継がれます(民法605条の2。2020年施行の改正民法で明文化)。入居者の承諾は不要で、退去を求める必要もありません
  • ただし買主が「その家に住みたい人」ではなく「家賃収入を得たい投資家」になるため、価格は住み心地ではなく利回り(投資額に対する家賃収入の割合)で決まります。結果として、空室の同じ物件を居住用として売る場合より1〜2割程度安くなるケースが多いのが実情です
  • 「高く売りたいから退去してもらう」は簡単ではありません。貸主からの解約には正当事由(後述)が必要で、立退料を払っても実現できるとは限りません

この記事では、オーナーチェンジ売却の仕組み、価格の決まり方、立ち退き交渉の現実、売却の流れと必要資料、敷金・入居者対応の注意点を解説します。


なぜ入居者がいても売れるのか:賃貸借契約は買主に引き継がれます

法律の仕組みを最低限だけ押さえておきましょう。賃借人(入居者)が引き渡しを受けて住んでいる建物では、所有者が変わっても賃借人は新所有者に賃借権を主張できます。そして2020年施行の改正民法605条の2により、賃貸不動産が譲渡されると、貸主としての地位は原則として当然に買主へ移転することが条文で明確になりました。売主・買主の個別の合意も、入居者の承諾も要りません。

引き継がれるものを整理すると次のとおりです。

項目引き継がれるか補足
賃貸借契約(家賃・期間などの条件)引き継がれる契約書を新たに巻き直す義務はない
敷金の返還義務買主に引き継がれる退去時に敷金を返すのは買主。売買時に精算するのが実務
滞納家賃(売却前の分)原則引き継がれない売主に請求権が残る。精算方法は契約で定める
修繕義務買主に引き継がれる給湯器故障などの対応は引渡し後は買主

つまり売主側から見ると、「入居者ごと・契約ごと・敷金の返還義務ごと」まとめて買主に渡すのがオーナーチェンジ売却です。

価格は利回りで決まる:収益還元の考え方

居住用の売却では「周辺の似た物件がいくらで売れたか」(取引事例比較)が価格の軸ですが、オーナーチェンジでは買主が投資家のため、「いくらの家賃収入を生むか」から逆算する収益還元の考え方が軸になります。

もっとも簡単な式は次のとおりです。

価格の目安 = 年間家賃収入 ÷ 買主が期待する表面利回り

計算例で見てみます。家賃10万円(年間120万円)で貸している区分マンションを、周辺の投資家が表面利回り6%を期待するエリアで売る場合。

  • 120万円 ÷ 6% = 2,000万円 が価格の目安

もし同じ部屋が空室で、居住用として2,300万円で売れる物件だとすると、オーナーチェンジでは約300万円(約13%)安い水準になります。居住用より安くなりがちな理由は主に3つです。

  • 買主が投資家に限られ、住宅ローン(低金利)ではなく金利の高い投資用ローンや現金で買うため、その分価格に厳しくなる
  • 買主が内覧できない(入居者の生活の場なので室内を見られない)ため、リスク分の値引きを織り込む
  • 実需(自分で住みたい人)との競争が起きず、価格が上がりにくい

逆に言えば、家賃が相場より高く取れている物件や、満室稼働中の一棟物件は、利回り計算で居住用相場を上回ることもあります。相場より安い家賃で長く貸している物件ほどオーナーチェンジでは安くなる、という関係は覚えておいてください。売出し前に「今の家賃は周辺相場と比べてどうか」を必ず確認しましょう。

「退去してもらってから売る」のハードルは高い

家賃が安すぎる場合など、「入居者に退去してもらい、空室にして居住用として高く売りたい」と考えるのは自然です。しかし、これは簡単ではありません。

  • 普通借家契約(一般的な賃貸借契約)では、貸主からの更新拒絶・解約申入れには正当事由が必要です(借地借家法28条)。「売りたいから」は、それだけでは正当事由として認められないのが原則です
  • 正当事由の判断では、貸主・借主双方の建物使用の必要性、賃貸借の経過、建物の状態などが総合考慮され、不足を補うものとして立退料の提供が考慮されます
  • 実務では、入居者との合意による解約(引っ越し費用+α相当の立退料を提示しての交渉)を目指しますが、金額の相場は事情により大きく変わり、入居者が応じる義務はありません

立ち退き交渉は時間もお金もかかり、こじれるリスクもあります。「立退料と空室期間の損失」より「オーナーチェンジで安くなる差額」の方が小さいなら、そのまま売る方が合理的です。なお、定期借家契約(期間満了で確定的に終了する契約)なら期間満了を待って空室で売る計画が立てられます。契約書がどちらの型かをまず確認してください。

売却の流れと必要資料:レントロールが物件の履歴書です

オーナーチェンジ売却の流れは通常の売却とほぼ同じですが、査定〜契約で求められる資料が異なります。早めに揃えるべきものは次のとおりです。

  • レントロール(家賃・契約期間・敷金などを一覧にした表。一棟物件なら全戸分): 投資家が最初に見る「物件の履歴書」です
  • 賃貸借契約書: 契約条件・特約・契約の型(普通借家か定期借家か)の確認に必須
  • 敷金・保証金の預かり状況がわかる資料
  • 家賃の入金履歴(滞納の有無を示すもの)・賃貸管理契約の内容
  • 修繕履歴・(マンションなら)管理費・修繕積立金の資料

査定を依頼する会社は、投資用物件の販売実績がある会社を選んでください。居住用中心の会社だと投資家の買主リストを持っておらず、販売が長引きがちです。買主が決まったら売買契約・決済と進み、決済日を基準に家賃と敷金を精算します。引渡し後は、新旧オーナー連名の「オーナー変更通知」で入居者に家賃振込先の変更を案内するのが通例です。

なお、賃貸中の物件でも売却時の税金の仕組みは通常と同じで、譲渡益が出れば所有期間5年超で20.315%の譲渡所得税がかかります(出典: 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算)。ただし投資用物件は3,000万円特別控除(マイホーム用の制度)が使えず、減価償却で取得費が下がっている分、譲渡益が出やすい点に注意が必要です。

入居者への対応:通知は不要でも、配慮はした方がいい

法律上、売却にあたって入居者の承諾は不要で、事前に知らせる義務もありません。販売活動も外観写真と資料ベースで行うため、入居者に気づかれずに進むことがほとんどです。ただし実務上は次の2点に配慮してください。

  • 敷金は必ず精算する: 敷金返還義務は買主に引き継がれるため、売買代金から敷金相当額を差し引く(または別途精算する)のが標準です。ここを曖昧にすると、入居者退去時に新旧オーナー間のトラブルになります
  • 引渡し後の通知は丁寧に: 家賃の振込先変更は入居者に実害が及ぶ変更です。新旧連名の書面で、変更時期・新しい連絡先を明確に案内しましょう。管理会社が同じなら入居者の手間はほぼゼロにできます

ちなみに、自宅を売って自分が入居者として住み続けるリースバックは、買主から見ると「自分がオーナーチェンジ物件を買う」のと同じ構造です。仕組みの理解にはリースバックの注意点も参考になります。

よくある質問

Q. 入居者に「買いませんか」と持ちかけるのはアリですか?

有力な選択肢です。入居者にとっては引っ越し不要で住み慣れた家を買えるため、外部の投資家より高い価格で合意できることもあります。断られても関係が悪化しないよう、打診の仕方は仲介会社と相談して慎重に進めてください。

Q. 家賃を滞納している入居者がいても売れますか?

売れますが、価格は大きく下がります。滞納は投資家にとって最大級のリスク要因だからです。売出し前に、管理会社や保証会社を通じて滞納を解消しておくか、状況によっては契約解除・明け渡しの手続きを済ませてから売る方が、トータルの手残りが多くなることもあります。

Q. 築古のオーナーチェンジ物件です。リフォームしてから売るべきですか?

入居中は室内のリフォーム自体ができませんし、投資家は利回りで判断するため外装や共用部への過剰な投資も回収しにくいです。基本はそのまま売却で問題ありません。空室になった場合の考え方は築古マンション・古い家は売れる?をご覧ください。

Q. 賃貸中の戸建てとマンションで違いはありますか?

仕組みは同じですが、戸建てやファミリータイプのマンションは「退去後に実需向けで売れる」出口があるため、投資家が単身向けより高めに評価することがあります。定期借家で残期間が短い物件は、実需価格に近づくこともあります。

Q. 売却額のほかに、確定申告で気をつけることはありますか?

譲渡所得の計算では、建物の取得費から賃貸期間中の減価償却費を差し引く必要があり、自宅の売却より計算が複雑です。また売却年の家賃収入は不動産所得として別途申告します。税額は個別の事情で変わるため、投資用物件の売却経験がある税理士への相談をおすすめします。


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※税額は個別の事情で変わります。最終判断は税理士・税務署にご確認ください。

この記事について

本記事は、不動産売却情報メディア URUMAE 編集部が公表されている制度・法令に基づいて執筆・編集しています。 制度・税率は執筆時点の情報です。個別の税務相談は税理士にご相談ください。

運営者は宅地建物取引士。不動産業界での実務経験15年。

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