結論:買い替えは「売却額が確定する前に、新居の予算を固めない」が鉄則です
家の買い替え(今の家を売って、新しい家を買うこと)は、売却と購入という2つの大きな取引を同時に進めるプロジェクトです。成否を分けるポイントは、突き詰めると2つしかありません。資金計画を「売却の手取り額」ベースで組むことと、売却と購入の引渡し日をそろえる段取りです。
最も多い失敗は、査定額をそのまま「売れる金額」と思い込み、その前提で新居を契約してしまうことです。家は実際に買い手が現れるまで、いくらで売れるか確定しません。さらに買い替えでは、売却側で売却価格の約4%、購入側で物件価格の約7%(ローン関係・登記費用込み)の諸費用がかかり、合計すると数百万円規模になります。この「確定しない売却額」と「見落としがちな諸費用」の2つを最初に押さえておけば、買い替えの大きな事故はほぼ防げます。
本記事では、買い替えの全体の流れ、実際の取引にもとづくスケジュール例、費用の計算例、動き出すタイミングの考え方、そして失敗しないための5つの鉄則を順番に解説します。
家の買い替え:全体の流れとかかる期間
買い替えの流れは、売却の各ステップに購入のステップを並行させる形になります。全体像は次のとおりです。
| ステップ | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1. 資金計画 | 相場を調べ、ローン残債と手取り額の概算をつかむ | 1〜2週間 |
| 2. 査定・会社選び | 複数社に査定を依頼し、売却を任せる会社を決める | 2〜4週間 |
| 3. 媒介契約・売出し | 価格を決めて販売開始。内覧対応 | 1〜3か月 |
| 4. 新居探し | 売却活動と並行して候補を絞り込む | 並行 |
| 5. 売買契約(売却) | 買主と契約し手付金を受け取る | — |
| 6. 売買契約(購入)・ローン本審査 | 新居を契約し住宅ローンの本審査 | 2〜4週間 |
| 7. 決済・引渡し | 売却と購入の決済をそろえて実行 | 契約から1〜3か月 |
| 8. 引越し・各種手続き | 引越し、住所変更、翌年の税務手続き | — |
動き出しから引越しまで、トータルでは6か月〜1年を見ておくのが現実的です。売却の販売期間は物件と価格設定によって大きく変わります(平均的な期間は不動産売却にかかる期間の平均で解説しています)。
実例で見る「契約から引渡しまで」のスケジュール
買い替えの段取りで意外と知られていないのが、売買契約から引渡し(決済)までの期間は案件ごとに大きく違うという点です。実際の中古マンション取引3件(神戸市内)のスケジュールを並べると、次のようになります。
| 実例 | 住宅ローンの融資承認 | 融資特約の期日 | 引渡し(決済) |
|---|---|---|---|
| A | 2月7日 | 2月14日 | 3月30日(承認から約7週間後) |
| B | 2月21日 | 2月28日 | 5月29日(承認から約14週間後) |
| C | 1月27日 | 1月末 | 2月13日(承認から約2週間半後) |
この3件から読み取れる実務のポイントは3つです。第一に、引渡しまでの期間は2週間半から3か月超まで、案件によって大きな幅があること。買主の資金事情や引越し時期の希望によって、契約時の話し合いで決まります。第二に、融資特約(住宅ローンが通らなかったら契約を白紙にできる条項)の期日は、融資承認の予定日から約1週間後に設定されていること。この期日を過ぎてからの解約は手付金放棄や違約金の対象になり得るため、買い替えでは自分が買主になる新居側の期日管理が重要です。第三に、買い替えではこの「売却側の引渡し日」に新居の決済日を近づける調整こそが段取りの核心だということです。
売り先行か買い先行か:判断の要点だけ
買い替えの順番には、今の家を先に売る「売り先行」と、新居を先に買う「買い先行」があります。原則は明快で、手元資金に余裕がなければ売り先行です。売却額が確定してから新居の予算を決められるため、資金計画が狂いません。代わりに仮住まいが必要になりやすいという代償があります。買い先行は仮住まい不要で新居をじっくり選べる一方、売却額が読みどおりでないと計画が崩れ、旧居のローンが残ればダブルローン(二重返済)のリスクを抱えます。
5つの軸での比較表と判断フロー、引渡し猶予や買い替え特約といった同時進行の実務テクニックは住み替えは売り先行と買い先行どっち?で詳しく解説しているので、順番に迷っている方はそちらをご覧ください。
買い替えの費用:売却3,500万円・購入4,500万円の計算例
買い替えは「売却の費用」と「購入の費用」が両方かかります。今の家を3,500万円で売り、4,500万円の家に買い替える場合の概算は次のとおりです。
| 区分 | 費用項目 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 売却側 | 仲介手数料(3,500万円×3%+6万円、税込) | 122.1万円 |
| 売却側 | 印紙税・抵当権抹消登記関係 | 約3万円 |
| 購入側 | 仲介手数料(4,500万円×3%+6万円、税込) | 155.1万円 |
| 購入側 | 印紙税・所有権移転などの登記費用・司法書士報酬 | 約41万円 |
| 購入側 | 住宅ローン事務手数料(借入4,000万円・融資額の2.2%型の場合) | 88万円 |
| 購入側 | 火災保険料など | 約15万円 |
| 共通 | 引越し費用(1回) | 約15万円 |
| 合計 | 約440万円 |
売却側の合計は約125万円(売却価格の約3.6%)、購入側は約300万円(購入価格の約6.7%)です。仮住まいを挟む場合は、家賃と引越しがもう1回分(数十万円)上乗せになります。なお、居住用の不動産取得税は軽減措置で0円になるケースも多く、ローン事務手数料は保証料型を選ぶと初期費用の構成が変わるなど、購入側の費用は選択によって上下します。売却側の費用の内訳と支払時期はマンション売却の諸費用 全一覧にまとめています。
重要なのは、この約440万円を「新居の予算」に最初から織り込むことです。売却手取り額から旧居のローン残債と上記費用を引いた金額が、新居の頭金として使える「本当の持ち金」になります。
買い替えのタイミング:市場・金利・ライフイベントの3つで考える
市場価格は「差額」で考える
「価格が高い今は売り時なのか、それとも買い時ではないのか」という疑問は、買い替えでは半分だけ正しい問いです。高値の局面では高く売れますが、新居も高く買うことになります。同じ市場内での買い替えなら価格水準の影響はある程度相殺されるため、見るべきは「売る家と買う家の差額(グレードアップ幅)が、自分の返済力に見合うか」です。市場全体の状況は2026年の不動産市場動向で解説しています。
金利とローンの年齢上限
住宅ローン金利が上昇傾向の局面では、同じ借入額でも毎月返済額が変わります。また、完済時年齢の上限(多くの金融機関で80歳前後)から逆算すると、50代以降の買い替えは借入期間が短くなり毎月返済が重くなりやすいため、売却益を頭金に厚く充てる、定年までの完済を前提に借入額を絞るといった調整が必要です。
ライフイベントと需要期
子どもの進学、親との同居・近居、定年といったライフイベントが買い替えの本当の期限です。そのうえで、住宅の需要期(転勤・進学前の1〜3月、次いで9〜10月)に売却の引渡しが重なるよう逆算すると、売りやすさの追い風を受けられます。たとえば春の需要期に引き渡すなら、前年の秋には査定・売出しを始めるイメージです。売り時の考え方は不動産売却のタイミングと売り時で詳しく解説しています。
住宅ローンが残っていても買い替えはできます
ローン返済中の家でも、引渡しと同時に売却代金でローンを完済し、抵当権(金融機関の担保権)を外すのが通常の流れで、残債があること自体は問題になりません。ポイントは「売却額がローン残債を上回るか」です。
売却額で完済できないオーバーローンの場合も、不足分を新居のローンに上乗せして借りる「住み替えローン」という選択肢があります。ただし担保価値を超える借入になるため審査は厳しく、売却と購入の決済を同日にそろえる必要があるなど、段取りの難易度が上がります。残債がある家の売り方の詳細は住宅ローンが残っている家は売れる?をご覧ください。
買い替えで使える税制を一言で
買い替えでは、売却の損益に応じて使える特例が変わります。ここでは全体像だけ押さえてください。
- 売却で利益が出た場合:3,000万円特別控除(出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例)で課税されないケースが多い一方、この特例と新居の住宅ローン控除は併用できません。どちらが得かは譲渡益とローン残高・年数によるため、新居の契約前に試算が必要です
- 利益が大きい場合の別の選択肢:特定のマイホームの買換え特例(出典: 国税庁 No.3355)は課税を新居売却時まで繰り延べる制度で、非課税になるわけではありません。3,000万円特別控除とは選択制です。適用期限は令和8年度税制改正で2年延長され、2027年(令和9年)12月31日までの売却が対象です(出典: 国土交通省 居住用財産の譲渡に関する特例措置)
- 売却で損失が出た場合:要件を満たせば損失を給与所得などと損益通算し、翌年以後3年間繰り越せます(出典: 国税庁 No.3370)。こちらは住宅ローン控除と併用できる、買い替えに手厚い制度です
適用要件は細かく、個別の事情で有利不利が変わります。契約前に税理士または税務署にご確認ください。
失敗しないための5つの鉄則
- 査定額の8割でしか売れなくても家計が回るか試算する。 査定額は「売れる保証額」ではありません。強気の査定額で会社を選び、その金額を前提に新居を契約するのが典型的な失敗パターンです
- 「本当の持ち金」を最初に計算する。 売却手取り額からローン残債と諸費用約440万円(上記例)を引いた金額が新居に使える資金です。この引き算を後回しにすると、契約後に資金不足が発覚します
- 決済日をそろえる段取りを価格交渉より優先する。 引渡し日の調整、引渡し猶予、買い替え特約といった道具を使えるかどうかで、仮住まい費用とダブルローンのリスクが大きく変わります
- 値下げの基準を売出し前に決めておく。 「3か月売れなかったら〇万円下げる」と先に決めておけば、新居の支払期限に追われて焦り売りする事態を防げます
- 期日をすべてカレンダーに落とす。 融資特約・買い替え特約の期日、決済日、引越し日。実際の取引でも融資特約の期日は融資承認予定日の約1週間後というタイトな設定が普通で、期日を過ぎた解約は手付金や違約金に直結します
よくある質問
Q. 買い替えにかかる期間はトータルでどれくらいですか?
資金計画の開始から引越しまで6か月〜1年が目安です。内訳は、査定と会社選びに約1か月、販売活動に1〜3か月、売買契約から引渡しまでに2週間〜3か月です。需要期に引渡しを合わせたい場合は、その6か月以上前に動き出すと余裕を持てます。
Q. 仮住まいなしで買い替えできますか?
できます。売却と購入の決済日を近づけ、必要に応じて引渡し猶予(決済後も数日〜1週間程度住まわせてもらう特約)を組み合わせれば、旧居から新居へ直接引っ越せます。ただし買主との交渉次第なので、確実にしたい場合は早めに不動産会社へ希望を伝えて段取りしてもらうことが重要です。
Q. 今の家のローンが残っていても、新居のローン審査は通りますか?
旧居の売却代金で完済することを前提にした審査が一般的で、売買契約書や残債資料で完済の見通しを示せれば通り得ます。旧居を売る前に新居のローンを組む場合は、一時的に二重のローンを抱える前提で返済比率が審査されるため、必要な年収のハードルが上がります。
Q. 頭金なしでも買い替えできますか?
物件価格全額の借入(フルローン)や諸費用込みの借入に対応する金融機関はありますが、借入額が増える分だけ審査は厳しく、毎月返済も重くなります。買い替えの場合は売却手取りを頭金に充てられるケースが多いため、まず手取り額を確定させてから借入額を決める順番が安全です。
売る前に、手取り額を知っておきませんか
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- 売却手取り計算ツールを使う — 税金・費用を引いた「手元に残る金額」を3分で試算
※税額は個別の事情で変わります。最終判断は税理士・税務署にご確認ください。
