状況別2026年5月24日

離婚で家を売却する注意点5つ【財産分与・住宅ローン・名義の全知識】

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結論:売却して現金で分けるのが、もっとも後悔の少ない選択です

離婚にともなう家の処理で、先に実務の結論をお伝えします。どちらかに強い事情がない限り、家は売却して現金で分けるのがもっともトラブルが少ない方法です。理由は単純で、現金は1円単位で公平に分けられるのに対し、家は分けられないからです。「妻が住み続けて夫がローンを払う」といった形は、離婚後も相手と経済的につながり続けることを意味し、滞納・再婚・売却したくなった時など、あらゆる場面で火種になります。

押さえるべき基本は3つです。第1に、財産分与(婚姻中に築いた財産を離婚時に分ける制度)は原則2分の1ずつで、家の名義がどちらか一方でも変わりません。第2に、選択肢は家の時価がローン残債を上回るか(アンダーローンかオーバーローンか)でほぼ決まります。第3に、税金面では「もらう側の贈与税は原則かからない」一方、財産分与で家を渡す側に譲渡所得税がかかることがあるという盲点があります。本記事では、財産分与の基本からローン別の選択肢、ペアローンの危険性、売るタイミングまで順番に解説します。


財産分与の基本:名義に関係なく原則2分の1です

財産分与の対象は「婚姻中に夫婦の協力で築いた財産」で、分け方は原則2分の1ずつです。専業主婦(主夫)の家庭でも、家事育児による貢献が評価されるため、この割合は基本的に変わりません。家の名義が夫単独でも、婚姻中に購入した家なら共有財産として分与の対象です。

一方、特有財産(婚姻前から持っていた財産や、婚姻中でも相続・贈与で得た財産)は対象外です。実務で影響が大きいのは頭金です。たとえば夫が独身時代の貯金や親からの援助で頭金を入れていた場合、その部分は夫の特有財産として、分与割合の計算で考慮されるのが一般的です。

なお、財産分与を請求できる期間は、2026年4月1日以降に成立した離婚では離婚成立から5年に延長されました(令和6年の民法改正。2026年3月31日以前の離婚は従来どおり2年です)。期間があるとはいえ、時間が経つほど話し合いは難しくなります。家の扱いは離婚条件の話し合いと同時に決めるのが原則です。

まず「アンダーローンかオーバーローンか」を確認する

家の選択肢を考える出発点は、時価とローン残債の比較です。査定(複数社推奨)とローン残高証明書で確認します。

状態意味取れる選択肢
アンダーローン時価 > 残債通常売却で完済し、残りを分与。どちらかが住み続ける選択も可
オーバーローン時価 < 残債通常売却は自己資金で不足分の補填が必要。無理なら住み続ける・任意売却等

計算例(アンダーローンの場合)を見てみましょう。時価3,200万円・残債2,400万円の家を3,200万円で売却したとします。

  • 仲介手数料:3,200万円×3%+6万円=102万円、消費税10%込みで112.2万円
  • 印紙税1万円+抵当権抹消・司法書士費用 約3万円
  • 手取り:3,200万円−2,400万円(ローン完済)−112.2万円−4万円=約684万円
  • 財産分与:684万円÷2=1人あたり約342万円

「時価−残債=800万円を2人で400万円ずつ」と考えがちですが、売却には諸費用がかかるため、実際に分けられる金額は一段小さくなります。分与額を先に約束してしまう前に、諸費用込みの手取りで計算してください(内訳はマンション売却の諸費用一覧で確認できます)。

オーバーローンの場合、家の純資産はマイナスなので、家自体は財産分与の対象になりません(他のプラス財産との合算で調整します)。売却するには不足分を自己資金で埋めて抵当権を外す必要があり、それが難しい場合は、金融機関の同意を得て売る任意売却という方法がありますが、信用情報への影響などデメリットも大きいため、まずは滞納する前に金融機関へ相談することが大切です。住み続けたい事情がある場合は、売却後に賃料を払って住み続けるリースバックという選択肢もあります(詳しくはリースバックの仕組みと注意点)。

ペアローン・連帯保証を残したままの離婚は危険です

離婚時にもっとも注意してほしいのが、ペアローン(夫婦それぞれが債務者になるローン)や、一方が連帯保証人・連帯債務者になっているケースです。

  • 離婚してもローン契約は1ミリも変わりません。離婚協議書で「ローンは夫が払う」と決めても、それは夫婦間の約束にすぎず、金融機関に対する妻の返済義務・保証債務はそのまま残ります
  • 元配偶者が滞納すれば、家を出て何年経っていても請求はあなたに来ます。最悪の場合、住んでもいない家のローンで信用情報に傷がつき、給与差押えに至ることもあります
  • 連帯保証人の変更や債務者の一本化は、金融機関の審査次第です。単独年収で返済負担率が収まらなければ認められず、実務では簡単に通りません
  • ペアローンの家に一方が住み続ける形は、住まない側の債務・持分・住宅ローン控除の問題が絡み、もっともこじれやすいパターンです

この「契約関係を完全に切れない」問題こそ、売却して完済する方法が推奨される最大の理由です。売却でローンを完済すれば、ペアローンも連帯保証も消滅し、経済的な縁を清算できます。

売るタイミング:離婚前と離婚後、税金はどう変わるか

「離婚前に売るか、離婚後に売るか」は税金と手続きの両面で違いが出ます。

【図表1:財産の渡し方と税金(婚姻中の名義変更=贈与税の対象、離婚後の財産分与=原則贈与税なし・渡す側に譲渡所得税の可能性)出典:国税庁】
タイミング・方法もらう側の贈与税主な注意点
婚姻中に家の名義を移す原則かかる財産分与ではなく贈与の扱い
離婚成立後に財産分与として渡す原則かからない多すぎる部分や偽装離婚は課税。渡す側に譲渡所得税
売却して現金を財産分与原則かからない売却益が出れば売主に譲渡所得税(特例で0円になることが多い)

ポイントを整理します。

1つ目、財産分与でもらう財産に贈与税は原則かかりません。婚姻中の財産関係の清算だからです。ただし、婚姻中の協力で得た財産に比べて多すぎる部分や、税金逃れの離婚と認められる場合は課税されます(出典: 国税庁 No.4414 離婚して財産をもらったとき)。逆に、離婚成立に家の名義を配偶者へ移すと通常の贈与として贈与税の対象になるため、名義変更で渡すなら離婚成立後に財産分与として行うのが原則です。

2つ目、マイホーム売却の3,000万円特別控除は「配偶者への譲渡」には使えません。この特例は親子や夫婦など特別の関係がある人への売却が適用除外だからです(出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例)。元配偶者は離婚成立後なら「配偶者」ではないため、離婚後の譲渡なら適用の余地が生まれます。第三者への通常売却であれば離婚前後を問わず使えますが、住まなくなった家は「住まなくなってから3年後の年末まで」の譲渡が要件である点に注意してください。家を出て別居が長引いているケースでは、この期限が意外と早く来ます。

盲点:財産分与で家を「渡す側」に譲渡所得税がかかります

もっとも見落とされやすいのがこれです。財産分与として家そのものを渡した場合、渡した側は「分与時の時価で家を譲渡した」ものとして譲渡所得税の対象になります(出典: 国税庁 No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき)。

「お金をもらっていないのに税金?」と驚かれますが、財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とみなす扱いです。たとえば2,000万円で購入した家が分与時に3,000万円に値上がりしていれば、値上がり益に課税され得ます。離婚成立後の分与で、自分が住んでいた家であれば3,000万円特別控除を使える場合があり、実際には税額が出ないケースも多いのですが、適用には確定申告が必要です。値上がりした家を分与で渡す方は、離婚協議の段階で税理士に確認しておくことを強くおすすめします。個別の事情で結論が変わる領域のため、断定は禁物です。

よくある質問

Q. 相手が売却に同意してくれません。単独で売れますか?

家が単独名義なら法律上は名義人だけで売却できますが、共有名義なら全員の同意がなければ売れません。また単独名義でも、相手が居住中のまま売るのは現実的に困難です。話し合いで進まない場合は、離婚調停の中で家の処理を含めて協議するのが一般的です。

Q. 離婚することは買主や不動産会社に伝える必要がありますか?

売却理由として離婚自体を買主に告げる法的義務はありません(心理的瑕疵にはあたらないのが一般的な理解です)。ただし不動産会社には正直に伝えてください。決済時に夫婦双方の協力(書類・立ち会い)が必要になるため、事情を知らないと段取りが組めません。

Q. 子どもの学区を変えたくないので住み続けたいのですが。

「妻子が住み、夫名義のローンが残る」形は、将来の滞納リスクを抱えます。どうしても住み続けるなら、住む側への借り換え・親族の協力・公正証書での取り決めなど、リスクを減らす手当てをしたうえで判断してください。リースバックで所有と居住を分離する方法も選択肢の一つです。

Q. 財産分与の話がまとまる前に、査定だけ受けてもいいですか?

むしろ先に受けるべきです。時価が分からなければ、アンダーローンかオーバーローンかも、分与額の計算もできません。複数社の査定書は、夫婦間の話し合いや調停でも金額の根拠資料として役立ちます。


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※税額は個別の事情で変わります。最終判断は税理士・税務署にご確認ください。

この記事について

本記事は、不動産売却情報メディア URUMAE 編集部が公表されている制度・法令に基づいて執筆・編集しています。 制度・税率は執筆時点の情報です。個別の税務相談は税理士にご相談ください。

運営者は宅地建物取引士。不動産業界での実務経験15年。

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