結論:迷い段階なら机上査定、売ると決めたら訪問査定です
不動産査定には大きく2種類あります。机上査定(きじょうさてい。データだけで概算を出す簡易査定)と、訪問査定(担当者が現地を見て精度の高い価格を出す査定)です。
使い分けの結論はシンプルです。「売るかどうかまだ迷っている」「おおよその価格だけ知りたい」段階なら机上査定で十分。「売る方向で動き出す」と決めたら、訪問査定が必須です。実務では、机上査定で2〜3社に絞り込み、その会社に訪問査定を依頼する二段構えが定番の流れです。
そしてもう1つ、先にお伝えしたい大事な結論があります。査定額は「その価格で売れる保証額」ではありません。査定額の高さだけで不動産会社を選ぶと、売れずに値下げを繰り返す典型的な失敗につながります。査定の場面で最も強調したいのはこの点です。本記事では、2つの査定の違いから、査定額との正しい付き合い方、査定前に自分で相場をつかむ方法まで解説します。
机上査定と訪問査定の違い【比較表】
| 比較項目 | 机上査定(簡易査定) | 訪問査定(詳細査定) |
|---|---|---|
| 査定の方法 | 立地・面積・築年数などのデータと成約事例で算出 | データに加えて担当者が現地・室内を確認して算出 |
| 結果が出るまで | 最短即日〜3日程度 | 現地確認1〜2時間+報告まで数日〜1週間 |
| 精度 | 粗い(実際の成約価格と1〜2割ずれることもある) | 高い(売り出し価格の根拠になる水準) |
| 現地の確認 | なし | 室内の状態・日当たり・眺望・境界・周辺環境まで確認 |
| 向いている人 | 売るか迷っている人・まず相場感を知りたい人・遠方の相続物件の当たりを付けたい人 | 売却を決めた人・住宅ローン残債と比べたい人・売り出し価格を決めたい人 |
机上査定の仕組みと限界
机上査定は、周辺の成約事例(実際に売れた価格)や公示地価などのデータをもとに、物件スペックから機械的・経験的に概算を出す方法です。申し込みから最短即日で結果が出る手軽さが魅力ですが、現地を見ていない以上、価格を左右する個別要因が反映されません。同じマンションの同じ間取りでも、階数・眺望・リフォーム歴・室内の傷み具合で数百万円変わることは珍しくなく、戸建てならさらに、境界の状況や再建築の可否といった要素が加わります。
机上査定の数字は「このくらいのレンジだろう」という出発点であって、売り出し価格の根拠にはならない、と理解しておいてください。
訪問査定で担当者が見ているポイント
訪問査定では、担当者が1〜2時間ほどかけて現地を確認します。主に見ているのは、室内の使用状態と修繕の要否、日当たり・騒音・におい等の住環境、マンションなら共用部の管理状態、戸建てなら境界標の有無や越境の状況、接している道路の幅などです。あわせて、権利関係や法令制限(建て替えできるか等)の調査も行った上で、根拠のある査定書が提示されます。
訪問査定を受けるときのコツは、査定額そのものより「根拠の説明」を比べることです。どの成約事例と比較したのか、プラス要因とマイナス要因をどう評価したのか、いくらで売り出していくら程度での成約を見込むのか。この説明が具体的な会社ほど、販売活動も信頼できる傾向があります。なお、訪問査定は無料が一般的で、依頼したからといって売却やその会社との契約が義務になるわけではありません。
AI査定・匿名査定はどう位置づければいい?
近年は、Web上で物件情報を入力すると即座に価格が表示されるAI査定や、個人情報を入れずに使える匿名査定も増えました。これらは実質的に机上査定の自動化版です。過去の成約データからの統計的な推計なので、事例の多い都市部のマンションでは比較的よく当たる一方、戸建てや郊外・地方の物件、個別性の強い物件では大きく外れることがあります。
営業連絡なしで相場感だけ得られるのは大きな利点なので、「検討の入口」として使うのは合理的です。ただし、AI査定の数字を根拠に売り出し価格を決めるのは危険です。位置づけとしては、AI査定・匿名査定で心の準備をして、机上査定で会社を絞り、訪問査定で価格を固める、という三段階の一番手前と考えてください。
査定額は「売れる価格」ではありません
ここが本記事で最も重要な部分です。査定額とは、不動産会社が「おおむね3ヶ月程度で成約できそうだ」と見込む予想価格であり、買取価格のような保証額ではありません。しかも査定額は会社によって数百万円差が出ることがあります。それは各社の得意分野や販売戦略の違いによるものですが、中には媒介契約(売却の仲介を任せる契約)を取るために、相場より明らかに高い査定額を提示する会社が存在します。俗に「高預かり」と呼ばれる手法です。
数字で見てみましょう。相場3,000万円の物件で、A社が2,950万円、B社が3,400万円の査定を出したとします。B社の数字が魅力的に見えますが、3,400万円で売り出して反響がなく、3ヶ月後に3,200万円、さらに3ヶ月後に3,000万円へ値下げした場合、結局売れるのは相場の3,000万円前後です。失ったのは半年の時間であり、売れ残り感がついた分、最終的に2,900万円まで下がることすらあります。高い査定額は1円の得にもならず、根拠のない高値はむしろ損につながるのです。
会社選びでは「査定額の高さ」ではなく「根拠の納得感」と「販売戦略の具体性」で比べてください。査定後の契約の選び方は媒介契約3種類の違いと失敗しない選び方で解説しています。
査定前に自分で相場をつかむ2つの方法
高預かりを見抜く最善の防御は、査定を受ける前に自分の相場観を持っておくことです。無料で使える公的な情報源が2つあります。
- レインズ・マーケット・インフォメーション:不動産流通機構(レインズ)が運営する一般向けサイトで、マンション・戸建ての実際の成約価格を地域別に検索できます。売り出し価格ではなく「実際に売れた価格」が分かるのが最大の価値です。運営団体の情報は東日本不動産流通機構の公式サイトから確認できます。
- 不動産情報ライブラリ:国土交通省が運営するサイトで、不動産の取引価格・成約価格情報、地価公示、防災情報や都市計画情報までまとめて確認できます(出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ)。土地や戸建ての相場を調べるときに特に有用です。
似た条件(同エリア・同程度の築年数・広さ)の成約事例を5件ほど拾って平米単価をならせば、素人でも相場のレンジはつかめます。この自分の相場観と各社の査定額を突き合わせれば、突出して高い査定に対して「根拠は何ですか」と確認できるようになります。
査定から売却までの流れと準備
査定を受けてから売り出しまでは、おおむね次の流れです。全体のスケジュール感は不動産売却にかかる期間の記事もあわせてご覧ください。
- AI査定・机上査定で相場感をつかむ(〜1週間)
- 2〜3社に訪問査定を依頼し、根拠の説明を比較する(1〜2週間)
- 会社を選び媒介契約を結ぶ
- 査定額と自分の相場観をもとに売り出し価格を決める
訪問査定までに用意しておくとよいのは、購入時の売買契約書・重要事項説明書、間取り図、マンションなら管理費・修繕積立金の分かる資料、戸建て・土地なら境界の資料(測量図など)、住宅ローンの残高証明です。リフォーム歴や設備の不具合も正直に伝えたほうが、後の取引トラブルを防げます。
よくある質問
Q. 査定は何社に頼むべきですか?
訪問査定は2〜3社が現実的です。1社では比較ができず、5社を超えると対応の負担が大きく、査定額のばらつきに混乱しがちです。机上査定やAI査定で当たりを付けてから、タイプの違う2〜3社(大手+地元密着など)に絞るのが効率的です。
Q. 査定にお金はかかりますか?
仲介を前提とした不動産会社の査定は、机上・訪問とも無料が一般的です。なお、裁判や税務申告で使う不動産鑑定士の「不動産鑑定評価」は有料(数十万円規模)の別サービスで、売却目的なら通常は不要です。
Q. 掃除やリフォームをしてから査定を受けるべきですか?
査定のためのリフォームは不要です。リフォーム費用を査定額の上昇が下回るケースが多いためです。掃除は査定額への直接の影響は小さいものの、内覧(購入検討者の見学)では大きく影響するので、売り出しまでに整えれば十分です。
Q. 査定額より高く売り出してもいいですか?
構いません。売り出し価格を決めるのは売主自身です。ただし相場から離れるほど反響は減り、売却期間は延びます。時間に余裕があるなら査定額の5%程度上まで、期限があるなら査定額前後、というように資金計画と期限から逆算して決めるのが実務的です。
売る前に、手取り額を知っておきませんか
不動産売却は、売る前の準備で決まります。URUMAEの無料ツールなら、査定前に自分で概算をつかめます。
- 売却手取り計算ツールを使う — 税金・費用を引いた「手元に残る金額」を3分で試算
※税額は個別の事情で変わります。最終判断は税理士・税務署にご確認ください。
