同じ部屋でも、住む人と投資家では見る数字が違います
「内覧前にお金をかけて整えれば、その分高く売れるはず」。でも、家賃収入を目当てに買う人には、室内の演出より賃料と経費の資料が判断材料になります。
だから、準備にお金をかける前に、どんな買主を想定するかを確かめます。これは棟を二種類に決めつける話ではありません。同じ棟でも、自宅として買う人と投資家の両方が候補になります。
「賃貸あり77.8%」は、住戸の77.8%が賃貸という意味ではありません
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、賃貸住戸があるマンションの割合は77.8%でした(出典:国土交通省の調査結果)。
全国の管理組合・区分所有者を対象にした調査で、管理組合の有効回収は1,589件です。この数字は「賃貸住戸がある棟の割合」。自分の棟の賃貸比率や、買主のうち投資家が占める割合ではありません。
つまり、賃貸があるだけで「投資家向けの棟」と判断するのは早計です。売る住戸の広さ・向き・入居状況も併せて見ます。
棟の見当をつける5つの方法は、組み合わせて使います
| 確かめるもの | 見る内容と限界 |
|---|---|
| 1.集合ポスト | 表札の有無。ただし匿名の居住者もいるため、賃貸戸数には換算しない |
| 2.総会議事録 | 実出席や委任状の状況。欠席だけで外部所有者とは決めない |
| 3.管理組合への質問 | 「賃貸はおおよそ何割ですか」と聞く。個人名の名簿は求めない |
| 4.賃貸募集 | 棟名で家賃・広さ・募集戸数を確認。募集額は成約家賃と区別 |
| 5.面積構成 | 単身向け中心か、家族で住める広さも多いか。面積だけでは決めない |
まずは管理組合への質問と、同じ棟の賃貸募集の確認から始めましょう。そこへ、自分の住戸と近い売却事例を重ねます。同じマンションの競合物件も比較材料になります。
【計算例】月7,000円の家賃差が、買値105万円差になります
想定家賃が月85,000円の住戸を、表面利回り8%で買う仮の例です。表面利回りは、年間家賃を価格で割る指標で、経費を引きません。
| 想定家賃 | 年間家賃 | 表面8%から逆算した価格 |
|---|---|---|
| 月85,000円 | 102万円 | 1,275万円 |
| 月78,000円 | 93万6,000円 | 1,170万円 |
102万円÷0.08=1,275万円です。家賃が月7,000円違うだけで、逆算価格には105万円の差が出ます。
管理費・修繕積立金が月25,000円、固定資産税・都市計画税が年60,000円なら、差し引いた年間収入は66万円です。これを5.5%で割ると1,200万円になります。
ただし、この経費だけの簡易試算です。空室、修繕、賃貸管理、借入、購入時の費用などは含めていません。8%や5.5%は相場でも推奨値でもなく、買主の想定を比べるための仮定です。
だから安い購入申込みには、「想定家賃はいくらですか」「経費と利回りは何を置きましたか」と聞きます。計算の詳しい見方はオーナーチェンジの売却価格へ。
【注意】買主を決めつける前に、二通りの根拠を求めます
住む人向けなら、清掃・整理や水回りの手入れを進めます。投資家向けなら、賃貸借契約書・入金履歴・修繕履歴と経費を整理します。
とはいえ、空室で渡せる住戸を利回りだけで値付けすると、住む人の評価を見落とすこともあります。賃貸中なら、その条件を踏まえた比較が必要です。
ということで、仲介会社に「住む買主向けの成約比較」と「投資家向けの家賃・利回り計算」を分けて示してもらってください。個別の評価や税務は、不動産会社や税理士へ確認しましょう。
お金をかける前に、誰が何を見て買うかを聞く。
続けて読むなら、マンション売却相場の調べ方です。
よくある質問
Q. 賃貸が多い棟は安くなりますか?
割合だけでは判断できません。賃料、経費、管理状態、近い住戸の成約を比べます。
Q. 管理組合が割合を答えられません。
募集情報などを補助にします。表札や総会の欠席者数から、正確な戸数を推定しないでください。
Q. 投資家の値引きに応じるべきですか?
想定家賃・経費・利回りの根拠を聞き、住む買主に売る選択肢とも比べます。

