マンション全体の再生と、自分の住戸の売却は別です
「5分の4が賛成すれば、マンション全体を売れるの?」。2026年4月1日、区分所有法の改正部分が施行されました。
建替えに加え、建物・敷地の一括売却、取壊し、一棟リノベーションなどを多数決で進める制度が整いました。ただし、築古だから自動的に売却できる、という改正ではありません。
これはマンション全体をどうするかのルールです。自分の住戸を通常の中古マンションとして売る際に、所有者の5分の4の賛成を集めるという意味ではありません。
売主が知りたいのは「法律で可能になったこと」と「自分のマンションで具体的に決まったこと」の違いです。関連改正には別の施行時期もあるため、この記事は2026年4月施行の決議制度を扱います(出典:国土交通省・改正マンション関係法)。
5分の4は、出席した人だけの割合ではありません
建替えなどの決議は、原則として区分所有者の人数と議決権の両方で5分の4以上の賛成が必要です。建物・敷地を売る場合は、さらに敷地利用権の持分の価格も判定します。
| 決議する内容 | 賛成割合を満たす対象 |
|---|---|
| 建替え、建物更新、取壊し | 区分所有者の人数・議決権の各5分の4以上 |
| 建物と敷地の売却、取壊し後の敷地売却 | 上記2つ+敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上 |
以下の5つの事由のいずれかに該当する場合は、各割合が4分の3以上に緩和されます。敷地売却を伴う制度には、敷地利用権が共有などになっていることも条件です。
仮に所有者100人で議決権が均等、敷地の持分の価格も均等なら、通常は80人、緩和対象なら75人の賛成が必要です。80人しか出席しなかったから64人で足りる、とはなりません。実際には1人が複数戸を持つ場合や持分が異なる場合があり、戸数だけでは計算できません。
管理の決議と再生の決議の混同に注意してください
通常の管理に関する決議は、法律や規約に別段の定めがなければ出席者とその議決権の各過半数です。書面・代理人による議決権行使も出席扱いになります。
出席者を基準にできる決議と、上表のように全体を基準にする決議は別です。賛成者の人数だけを聞くのではなく、「何の決議で、誰の議決権を分母にした計算か」を議案書で確認してください(出典:区分所有法38・39・62・64条の5〜8)。
4分の3に緩和される5つの事由
法律上の事由は次の5つです。単に「古い」「設備が傷んだ」という印象では判断できず、法務大臣が定める基準などとの照合が必要です。
| 事由 | 確認する状態 |
|---|---|
| 耐震性の不足 | 地震に対する安全性の基準に適合しない |
| 防火性の不足 | 火災に対する安全性の基準に適合しない |
| 外壁などの危険 | 剥落・落下で周辺に危害を及ぼすおそれがある |
| 配管設備の劣化 | 改修が著しく困難な対象配管の腐食などにより、著しく衛生上有害となるおそれがある |
| バリアフリーの不足 | 移動などの円滑化に関する基準に適合しない |
たとえば、旧耐震基準で建てられたことだけで、緩和対象と決まるわけではありません。「エレベーターがない」「配管が古い」だけでも断定できません。管理組合に、どの事由を想定し、どの調査・診断で基準への適合を確認したのかを聞いてください(出典:国土交通省・改正法の概要)。
売却前には、議事録と収支の前提を確認します
再生の話が出ているなら、直近の総会議事録・議案書、調査報告書、費用や売却代金の試算を確認します。資料の集め方は重要事項調査報告書の読み方も参考になります。
確認したいのは、検討を始めただけなのか、決議が成立したのか、誰が買う予定なのか、各所有者の費用負担と代金配分はどうなるのか、という点です。一括売却の決議事項には買主、売却代金の見込額、分配方法などが含まれます。建替えなら工事費や新しい住戸の権利の配分も問題になります。
「一括売却できそう」という期待だけで個別住戸の値上がりを見込むのは早計です。買主へ伝えるときも「検討中」「決議済み」を分け、資料の日付を添えましょう。日常の維持費については修繕積立金の値上げと売却時の確認点を併せて確認できます。
検討中と決議済みを分けて伝える
よくある質問
Q. 総会に来ない所有者は、人数から外せますか?
欠席だけでは外せません。所有者や所在が分からない場合には、裁判所の決定で決議の対象から除外する制度があります。管理組合の判断だけで除外するものではありません。
Q. 一棟リノベーションと大規模修繕は同じですか?
同じではありません。法律上の「建物更新」は、構造上主要な部分の効用を維持・回復する共用部分の変更と、すべての専有部分の形状・面積・位置関係の変更を伴うものです。
Q. 決議が通れば、すぐ代金を受け取れますか?
決議と売却代金の受領は別の段階です。契約・権利関係の整理など、具体的な手続きと支払時期を管理組合や担当専門家に確認してください。
※2026年10月24日更新:決議の分母と敷地持分の条件、緩和事由の説明を修正しました。

