相続2026年5月19日

相続した実家を売る方法【手続きの順番・税金・特例の全知識】

相続実家売却相続登記空き家特例取得費加算

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結論:順番は「遺言確認→遺産分割協議→相続登記→売却」。登記しないと売れません

相続した実家は、亡くなった親の名義のままでは売却できません。売る前に必ず相続登記(名義をあなたに変える手続き)が必要で、その前提として「誰が相続するか」を確定させる必要があります。つまり順番はこう決まっています。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 相続人全員で遺産分割協議(誰が何を相続するか決める話し合い)を行う
  3. 相続登記で実家の名義を変更する
  4. 査定を受けて売却活動を始める

そして税金面では、相続した実家の売却に使える大きな特例が2本あります。取得費加算の特例相続空き家の3,000万円特別控除です。この2つは同じ物件に併用できないため、どちらが得かを売る前に見極めることが手取りを左右します。

相続物件の売却で多いのは、「何から手を付ければいいか分からないまま1年経ってしまった」というケースです。2024年4月からは相続登記が義務化され、放置には過料(罰金に似た金銭負担)のリスクもあります。この記事で手順と期限を整理しましょう。


売却までの手続きを時系列で確認

順番やること目安の期間
1遺言書の確認(自宅・法務局・公証役場を探す)死亡後すみやかに
2相続人の確定(戸籍謄本を出生まで遡って収集)1〜2ヶ月
3遺産分割協議・協議書の作成(相続人全員の実印)1〜3ヶ月(もめると長期化)
4相続登記(法務局へ申請)申請から1〜2週間で完了
5家財整理・査定・媒介契約1〜2ヶ月
6売却活動〜売買契約〜引き渡し3〜6ヶ月
【図表1:相続した実家を売るまでの流れ(遺言確認から引き渡しまで)】

1. 遺言書の確認から始めるのは、遺言があれば遺産分割協議を省略できることがあるためです。自筆の遺言書が自宅で見つかった場合は勝手に開封せず、家庭裁判所の検認(遺言書の状態を確認する手続き)が必要です。法務局の保管制度や公正証書遺言なら検認は不要です。

2. 相続人の確定では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本を集めます。ここで前妻との子など想定外の相続人が判明することが実務では時々あり、後の協議をやり直さないためにも最初に確実に行います。

3. 遺産分割協議では実家を誰が相続するかを決めます。売却して代金を分けるつもりでも、いったん誰かの名義にする「換価分割」(売却代金を分ける前提の分割方法)や共有名義にする方法があります。換価分割なら協議書にその旨を明記しておくと、代金を分けたときに贈与税の問題が生じにくくなります。共有名義での売却は全員の同意と書類が必要になり手間が増えるため、売却前提なら代表者1人の名義にする換価分割が実務ではよく使われます。

4. 相続登記は司法書士に依頼するのが一般的で、報酬は6〜10万円程度、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)が別にかかります。評価額1,000万円の実家なら登録免許税は4万円です。

相続登記は義務です:2024年4月から・3年以内・過料10万円以下

2024年4月1日から、相続登記は法律上の義務になりました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。2024年3月以前に相続した不動産も対象で、その場合は2027年3月31日までが期限です(出典: 法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A)。

遺産分割協議がまとまらない場合には「相続人申告登記」という簡易な申出で義務だけ果たす方法もありますが、これでは売却はできません。売るためには通常の相続登記まで進める必要があります。

使える税制は2本:空き家3,000万円控除と取得費加算

相続した実家の売却で検討すべき特例は次の2本です。

項目相続空き家の3,000万円特別控除取得費加算の特例
効果譲渡所得から最高3,000万円を控除(相続人3人以上は2,000万円)払った相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得を圧縮
主な要件昭和56年5月31日以前建築の家屋・相続開始直前に被相続人が一人暮らし・売却代金1億円以下・耐震改修か取り壊しが必要(買主が翌年2月15日までに行う場合も可)相続税を実際に納めていること
期限相続開始から3年目の年末まで、かつ2027年12月31日までの売却相続税の申告期限の翌日から3年以内の売却(死亡から約3年10ヶ月)
出典国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

使い分けの目安はシンプルです。同じ物件には併用できないため、次の順で考えます。

  • 空き家特例の要件を満たすなら、控除額が大きい空き家特例が有利なケースが大半です
  • 空き家特例の要件を満たさない(新耐震の建物・親が老人ホーム入所要件を外れる・マンション等)場合や、相続税を多額に納めた場合は取得費加算を検討します
  • そもそも相続税を納めていない人は取得費加算は使えません(相続税がかかる人は全体の約1割で、令和6年分の課税割合は10.4%です)

計算例:空き家特例が使えると税金はいくら変わる?

実家(昭和55年築の戸建て)を2,500万円で売却したケースで比べます。親が買った当時の契約書がなく取得費が不明のため、概算取得費(売却価格の5%=125万円)を使い、譲渡費用(仲介手数料など)は90万円とします。

  • 譲渡所得=2,500万円−125万円−90万円=2,285万円
  • 特例なしの場合:2,285万円×20.315%(長期譲渡の税率)=約464万円の税金
  • 空き家特例あり:2,285万円−3,000万円<0 → 譲渡所得0円で税金0円

差は約464万円。特例が使えるかどうかで手取りが数百万円変わるのが相続実家売却の最大のポイントです。相続した物件は取得費不明のことが多く譲渡所得が大きく出やすいため、特例の要件確認は売り出し前に必ず行ってください。なお、税金0円でも確定申告は必要です。要件判定は細かい条件が多いため、個別の事情については税理士や税務署への確認をおすすめします。

親の家の状態を確認する手順は相続した実家のチェックリストに、死亡直後からの手続き全体の期限は親が亡くなったら家はどうする?にまとめています。

家財整理・仏壇・思い出の品:現実に一番大変なところ

手続きよりも実際に売主を消耗させるのが、家財の片付けです。実家は物量が多く、感情も絡みます。ここでは3つだけお伝えします。

遺品整理は「売ると決めてから」でよく、ただし査定は片付け前でも受けられます。荷物があっても査定額はほぼ変わりません。片付けてから査定、と考えて何ヶ月も止まってしまうのが一番もったいないパターンです。遺品整理業者に頼む場合、戸建て一軒でおおむね20〜60万円程度が相場感です(物量・地域で大きく変わります)。

仏壇・位牌・神棚は「閉眼供養」を検討します。仏壇をそのまま処分することに抵抗がある方は、菩提寺や仏壇店に閉眼供養(魂抜きとも呼ばれる儀式)を依頼するのが一般的で、お布施は1〜5万円程度が目安です。位牌は寺院での永代供養に移す方法もあります。宗派や地域で考え方が違うため、まず菩提寺に相談してください。

権利証・契約書・保険証券類は捨てる前に必ず抜き出します。購入時の売買契約書が見つかれば取得費を実額で計算でき、税金が大きく減る可能性があります。段ボールごと処分する前に、書類だけは一箱に集めておきましょう。

売却以外の選択肢も一度だけ検討を

売却が唯一の正解ではありません。賃貸に出す・親族が住む・解体して土地活用という道もあります。ただし、空き家のまま放置する選択だけは避けてください。管理責任・固定資産税・老朽化のリスクを負い続けることになります。判断の分かれ目は「その家に住む予定の人がいるか」「賃貸需要のある立地か」の2点で、どちらもノーなら早めの売却が経済合理的です。空き家特例には「相続開始から3年目の年末まで」という期限があるため、迷っている間に特例を逃すのが最悪のシナリオです。

よくある質問

Q. 相続登記をせずに、亡くなった親の名義のまま売る方法はありませんか?

ありません。売買による所有権移転登記は現在の名義人からしかできないため、相続登記は必須です。ただし売却活動(査定・売り出し)は登記完了前でも始められるので、登記と販売準備を並行して進めれば時間のロスは抑えられます。

Q. 相続人の1人が売却に反対しています。売れますか?

共有名義にした場合、全員の同意がないと売却できません。話し合いで解決しない場合は、遺産分割調停や、自分の持分だけの売却(買取業者相手・価格は大きく下がります)といった選択肢になります。もめそうな場合は共有名義を避け、協議の段階で換価分割を選ぶのが予防策です。

Q. 空き家特例は取り壊してからでないと使えませんか?

いいえ。2024年からの改正で、買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しを行う場合でも適用できるようになりました。売主が解体費を先出ししなくても使える道があるため、契約条件の組み方を不動産会社と相談してください。

Q. 相続してから何年以内に売るのがよいですか?

税制上の目安は2つです。取得費加算は相続税申告期限の翌日から3年(死亡から約3年10ヶ月)以内、空き家特例は相続開始から3年目の年末までの売却が条件です。つまり3年以内を一つの区切りとして動くと、特例の選択肢を残せます。


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※税額は個別の事情で変わります。最終判断は税理士・税務署にご確認ください。

この記事について

本記事は、不動産売却情報メディア URUMAE 編集部が公表されている制度・法令に基づいて執筆・編集しています。 制度・税率は執筆時点の情報です。個別の税務相談は税理士にご相談ください。

運営者は宅地建物取引士。不動産業界での実務経験15年。

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