相続2026年8月18日

相続土地国庫帰属制度【2026年最新】処理済みの70%が国庫帰属、負担金の実額と取下げ1,102件の中身

相続土地国庫帰属制度負担金いらない土地相続放棄空き家

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結論:落ちる人は4.2%。取下げの半分は「他に引き取り手が見つかった」です

相続した土地に使い道がなく、売れる見込みもない。固定資産税だけを払い続けている。そうした土地を国に引き取ってもらえるのが相続土地国庫帰属制度です。2023年4月27日に始まりました。

使えない制度だと紹介されることの多い制度ですが、法務省の統計を処理済みベースで見ると印象が変わります。令和8年(2026年)7月31日現在の数字はこうです。

項目件数
申請5,863件
国庫帰属(承認され所有権が国へ移った)3,008件
却下85件
不承認96件
取下げ1,102件

(出典: 法務省 相続土地国庫帰属制度の統計

処理が終わった件数は 3,008+85+96+1,102 で4,291件になります。この内訳を割合に直すと、次のようになります。

結果件数処理済みに占める割合
国庫帰属(成功)3,008件約70.1%
取下げ1,102件約25.7%
却下+不承認(落ちた)181件約4.2%
【図表1:処理済み4,291件のうち国庫帰属70.1%、取下げ25.7%、却下・不承認4.2% 出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」令和8年7月31日現在】

審査で落ちるのは4.2%。その約6倍にあたる25.7%が取下げです。では取下げた人は何をやめたのか。法務省は1,102件の内訳まで公表しています。

取下げの理由件数
有効活用の見込みが生じた571件
却下・不承認であることが判明した392件
その他139件

最も多いのは「有効活用の見込みが生じた」571件です。自治体や国の機関が活用することになった、隣接地の所有者から引き受けの申出があった、農業委員会の調整で農地として使われる見込みになった。つまり国に渡す手前で、別の引き取り手が現れている。取下げは失敗の山ではありません。

一方、審査で通らないと分かった時点での取下げが392件あります。これを却下・不承認の181件に足しても573件、処理済みの13.4%です。落ちる土地は、思われているほど多くありません。

したがってこの記事では、通るか落ちるかではなく、いくらかかるのか、売るのとどちらが得かを中心に整理します。


いくらかかるのか

審査手数料は土地1筆あたり14,000円です。申請時に収入印紙で納付し、取下げても却下・不承認になっても返還されません(出典: 法務省 相続土地国庫帰属制度の概要)。

負担金は、承認後に納める、国が10年間管理するための費用相当額です。これを納めた時点で所有権が国に移ります。負担金の通知が到達した日の翌日から30日以内に納付しなければなりません。

区分ごとの扱いは次のとおりです。

種目負担金
宅地面積にかかわらず20万円。ただし市街化区域または用途地域が指定されている地域内の宅地は面積に応じ算定
田・畑面積にかかわらず20万円。ただし市街化区域・用途地域内、農用地区域内、土地改良事業等の施行区域内の農地は面積に応じ算定
森林面積に応じ算定
その他(雑種地・原野等)面積にかかわらず20万円

(出典: 法務省 相続土地国庫帰属制度の負担金

田舎の広い土地ほど20万円で済み、市街地の狭い宅地ほど高くなる。直感とは逆の構造ですが、国が管理する手間を反映した結果です。

市街化区域または用途地域内の宅地に適用される算定式は次のとおりです。

面積区分負担金額
50㎡以下面積 × 4,070円 + 208,000円
50㎡超100㎡以下面積 × 2,720円 + 276,000円
100㎡超200㎡以下面積 × 2,450円 + 303,000円
200㎡超400㎡以下面積 × 2,250円 + 343,000円
400㎡超800㎡以下面積 × 2,110円 + 399,000円
800㎡超面積 × 2,010円 + 479,000円

森林の場合は750㎡以下で「面積 × 59円 + 210,000円」となり、宅地よりはるかに低い単価です。


計算例:150㎡の市街地の宅地を手放す場合

用途地域内にある150㎡の宅地に、古い木造家屋が建っているとします。

項目金額
審査手数料14,000円
負担金(150㎡ × 2,450円 + 303,000円。千円未満切捨て)670,000円
建物の解体費(木造・目安)1,500,000円
合計約218万円

建物がある土地は却下要件に当たるため、解体してからでないと申請できません。負担金より解体費のほうが高くつくのが普通で、ここがこの制度の最大の出費になります。

仮に同じ土地が200万円で売れるなら、仲介手数料(200万円の場合は代金の5%+消費税で11万円。ただし800万円以下の低廉な空家等については、事前の合意があれば30万円+消費税まで受け取れる特例が2024年7月から適用されています)を差し引いても手元にお金が残ります。手放すのに218万円を払うのとは、約400万円の差になります。

この制度は、売る努力をしたうえで、それでも売れなかった土地のための最後の手段です。順番を間違えないでください。売却の検討手順は土地売却の流れと税金にまとめています。

一方、市街化調整区域にある500㎡の宅地なら、負担金は面積にかかわらず20万円です。建物がなければ合計21万4千円で済みます。買い手がつかない土地であれば、これは十分に現実的な選択肢になります。


引き取ってもらえない土地の要件

法務省は要件を、申請の段階で直ちに却下される却下要件と、審査の結果として不承認になる不承認要件に分けています(出典: 法務省 引き取ることができない土地の要件)。

却下要件内容
A建物がある土地
B担保権(抵当権等)や使用収益権(地上権・地役権・賃借権等)が設定されている土地
C他人の利用が予定されている土地(現に道路として利用、墓地内、境内地、水道用地・用悪水路・ため池)
D特定有害物質により土壌汚染されている土地
E境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲に争いがある土地
不承認要件内容
A勾配30度以上・高さ5メートル以上の崖があり、擁壁工事等が必要な土地
B管理・処分を阻害する工作物、車両、樹木等が地上にある土地
C除去しなければ通常の管理・処分ができない有体物が地下にある土地
D隣接地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地(通行権が妨げられている袋地など)
Eその他、通常の管理・処分に過分の費用または労力を要する土地

実務で実際に引っかかっている場所は、法務省が公表している理由別の内訳から読めます。却下85件で最も多いのは添付書類の未提出37件、次いで境界が明らかでない土地23件、通路として使われている土地22件です。建物がある土地は4件にとどまります。不承認96件では、工作物・車両・樹木等が地上にある土地46件と、国による追加整備が必要な森林37件で大半を占めます(1件に複数の理由が認められる場合があります)。

要件そのものより、書類の不備と、土地の上に残っている物のほうが多い。建物は解体費、境界は測量費という現金の問題に直結しますが、申請前にまず片づけるべきは添付書類と、地上の工作物・樹木です。境界の確定にかかる費用と期間は確定測量が必要な理由と費用で解説しています。

申請できるのは、相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した人です。売買や生前贈与で取得した土地は対象外になります。制度の施行前、つまり2023年4月27日より前に相続した土地も対象になるため、何十年も前に相続した土地でも申請できます。共有地の場合は、共有者全員が共同して申請する必要があります。


相続放棄・寄付との違い

似た選択肢と並べると、この制度の位置づけがはっきりします。

方法できること主な制約
相続土地国庫帰属いらない土地だけを手放す建物不可、境界が明らかであること、負担金20万円〜
相続放棄相続そのものを放棄する預貯金など他の財産も一切受け取れない。原則3か月以内
自治体への寄付無償で引き取ってもらう受け入れる土地は限定的。断られることが多い
売却(仲介・買取)お金が入る買い手がつかない土地には使えない
何もしない手続き不要固定資産税が続く。管理不全空家等に指定されると住宅用地特例が外れる

最も危険なのは最後の「何もしない」です。管理を怠った空き家は指定を受けると税負担が跳ね上がります。詳しくは管理不全空家に指定されると固定資産税が最大6倍にをご覧ください。

相続放棄との違いも押さえておいてください。放棄すれば土地は要らなくなりますが、預金も家も受け取れません。この制度なら、他の財産は受け取ったうえでこの土地だけを外せます。相続放棄の実際は不動産を相続放棄したらどうなる?で扱っています。


申請前にやるべきこと

まず、売れるかどうかを確かめてください。前述のとおり、売れる土地なら売ったほうが確実に得です。買い手がつかないという判断は、実際に売りに出してみてから下すべきものです。相続した実家を含む手順は相続した実家を売る方法にあります。

次に、建物が3,000万円控除の対象にならないかを確認します。相続した空き家を取り壊してから、または耐震改修してから売る場合、一定の要件を満たせば最高3,000万円の特別控除が使えます(相続人が3人以上の場合は、1人あたり2,000万円が上限になります)。期限は2027年12月31日です。解体費をかけるなら、この特例が使えるうちに売る方向で検討する価値があります。条件は空き家の3,000万円特別控除で確認してください。

そして、法務局の事前相談を使ってください。申請前に相談できます。審査で通らないと分かってからの取下げが392件あります。14,000円は取下げても戻りません。払う前に、要件に引っかからないかを確認してください。


よくある質問

Q. 農地でも申請できますか?

できます。統計上も田・畑が申請の最多区分で、5,863件中2,278件を占めます。農地法の許可は不要とされています。ただし農用地区域内の農地は、負担金が面積に応じた算定になります。

Q. 山林は引き取ってもらえますか?

申請893件に対し、森林としての帰属は199件です。適切な造林や間伐が実施されていない森林は不承認要件Eに該当し得ます。一方で負担金の単価は宅地よりはるかに低く、750㎡以下なら面積×59円+21万円です。手入れの状況が分かれ目になります。

Q. 建物を解体すれば必ず通りますか?

必ずではありません。解体後も地下に基礎やがれきが残っていれば不承認要件Cに当たり得ます。解体を依頼するときは、地中の残置物まで撤去する内容になっているかを見積書で確認してください。

Q. 審査にはどれくらいかかりますか?

法務局が定める標準処理期間は8か月です。ただし申請の内容や天候等の理由でこれを超える場合があります。現地調査が入るため、季節や地域によっても前後します。

Q. 負担金を払えないときはどうなりますか?

通知が到達した日の翌日から30日以内に納付しなければ、承認の効力が失われます。支払えるかどうかを含めて、申請前に資金の見通しを立てておいてください。

Q. 隣の人と境界でもめています。申請できますか?

却下要件Eに当たります。争いを解決するか、確定測量で境界を明示する必要があります。ここが最も費用と時間のかかる関門です。


売る前に、手取り額を知っておきませんか

不動産売却は、売る前の準備で決まります。手放す前に、まず売れるかどうかと、売れた場合に何が残るかを確かめてください。

※統計は法務省公表の令和8年7月31日現在の数値です。要件の該当性や負担金の額は個別の土地の状況によって異なります。申請前に管轄の法務局にご確認ください。

この記事について

本記事は、不動産売却情報メディア URUMAE 編集部が公表されている制度・法令に基づいて執筆・編集しています。 制度・税率は執筆時点の情報です。個別の税務相談は税理士にご相談ください。

運営者は宅地建物取引士。不動産業界での実務経験15年。

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