結論:マイホームの譲渡益3,000万円までは税金0円、最大約609万円の差になります
「3,000万円まで控除されるなら、申告もしなくていいはず」。多くの人が最初にそう考えます。ところが、長期譲渡で譲渡益3,000万円なら控除なしの税額は609万4,500円で、この差は確定申告をして初めて消えます(出典: 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例)。
だから、マイホームを売る人は「使える家か」「期限内か」「申告の準備があるか」を最初に確かめることが大切です。
この記事では、3,000万円特別控除(正式には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」)の条件と、使えない場合、申告の準備を、自宅を売る人に向けて整理します。
譲渡益が大きいほど効き、3,000万円までは税額がそのまま消えます
控除の効果は、譲渡益(売った価格から取得費と売却費用を引いた利益)の大きさで決まります。つまり、利益が出る人ほど差が大きくなる制度です。長期譲渡(所有5年超・税率20.315%)で比べます。
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| 譲渡益 | 控除なしの税額 | 控除ありの税額 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 101万5,750円 | 0円 | 101万5,750円 |
| 1,000万円 | 203万1,500円 | 0円 | 203万1,500円 |
| 2,000万円 | 406万3,000円 | 0円 | 406万3,000円 |
| 3,000万円 | 609万4,500円 | 0円 | 609万4,500円 |
| 4,000万円 | 812万6,000円 | 203万1,500円 | 609万4,500円 |
たとえば4,000万円の譲渡益なら、控除後の1,000万円にだけ課税されます。さらに所有期間10年超なら、控除後の金額に10年超所有の軽減税率14.21%を重ねて使えます。とはいえ、どれも要件を満たした場合の話なので、次に条件を見ます。
使えるのは「住んでいた家」だけで、所有期間の長さは問われません
適用要件は国税庁タックスアンサーNo.3302に定められています。つまり、ポイントは「自分が住んでいた家を、身内以外に、期限内に売る」ことです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 自分が住んでいる家 | 今住んでいる家屋、またはその家屋と敷地を一緒に売ること |
| 住まなくなった場合の期限 | 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること |
| 直近2年に同種の特例を使っていない | 前年・前々年にこの特例やマイホームの譲渡損失の特例を使っていないこと |
| 買換え特例などと重複しない | 売った年とその前後に、マイホームの買換え・交換の特例を受けていないこと |
| 売る相手が身内でない | 親子・夫婦など特別な関係のある人への売却でないこと |
一方で、所有期間の長短は問われません。買って2年の家でも、住んでいた家なら対象です。税率は短期のままですが、控除で譲渡益そのものを消せます。
【注意】期限切れ・身内への売却・住宅ローン控除との重複では使えません
要件を満たしていても、次の4つの場合は使えません。どれも売る前なら避けられるので、契約前に確かめてください。
1つ目は期限切れです。たとえば2023年5月に転居した場合、期限は「3年を経過する日(2026年5月)の属する年の12月31日」=2026年12月31日です。だから、期限の年に売るなら販売期間を逆算して早めに動く必要があります。
2つ目は親族間の売買です。配偶者・直系血族(親・子・孫)、生計を一にする親族、同族会社などへの売却は対象外です。つまり「子どもに安く売って控除も使う」という計画は成り立ちません。
3つ目は、特例を受けるためだけの入居・新築中の仮住まい・別荘です。住民票ではなく生活の実態で判断されます。
4つ目は、新居の住宅ローン控除との重複です。新居に入居した年・その前2年・その後3年以内に旧居の売却でこの特例を使うと、住宅ローン控除は受けられません。
そのため買い換えでは、どちらか有利な方を選ぶことになります。旧居の譲渡益が大きければ3,000万円控除が、ゼロに近ければ住宅ローン控除が有利になりやすいです。ただし、借入額や入居年で結論が逆転するため、個別の判断は税理士か税務署で試算してください。
夫婦の共有名義なら1人3,000万円ずつ使えます
夫婦共有名義のマイホームなら、要件を満たす共有者それぞれが最大3,000万円の控除を使えます。つまり、名義の持ち方で税額が大きく変わります。
【計算例】夫婦2分の1ずつの共有名義の自宅を売り、全体で4,600万円の譲渡益が出たとします。
| 名義 | 計算 | 税額 |
|---|---|---|
| 単独名義 | (4,600万円 − 3,000万円)× 20.315% | 325万400円 |
| 夫婦共有(各2分の1) | 各自2,300万円 − 各自の控除3,000万円 | 夫婦とも0円 |
同じ家・同じ価格でも、名義のあり方で300万円以上の差が出ます。ただし控除が使えるのは「所有者として住んでいた人」なので、名義だけ入れて住んでいない家族には使えません。
税額が0円でも、確定申告をしないと控除は受けられません
この特例は、確定申告をして初めて適用されます。なぜなら、申告しなければ控除なしの譲渡益に課税されるからです。時期は売った翌年の2月16日〜3月15日で、会社員でも年末調整では処理できません。申告が要るかの判断は売却後の確定申告は必要?不要?で整理しています。
| 書類 | 入手先 |
|---|---|
| 確定申告書(分離課税用の第三表を含む) | 税務署・国税庁サイト(e-Tax) |
| 譲渡所得の内訳書 | 税務署・国税庁サイト |
| 売却時・購入時の売買契約書のコピー | 手元保管 |
| 仲介手数料などの領収書 | 手元保管 |
| 登記事項証明書(売却物件) | 法務局 |
| 戸籍の附票の写しなど | 市区町村(契約日の前日時点で住民票の住所と売却物件の所在地が異なる場合) |
とくに購入時の契約書がないと、売却価格の5%(概算取得費)で計算することになり、譲渡益が大きく膨らみます。そこで、書類探しは売却の準備と同時に始めてください。
まとめ:売る前に「住んでいた期限」と「購入時の契約書」を確かめましょう
ということで、住んでいた家を期限内に身内以外へ売る人は、この特例で譲渡益3,000万円まで税金を0円にできます。買い換えで住宅ローン控除も使いたい人は、どちらが有利かを先に試算しましょう。
控除は申告して初めて手元に残ります
今日できることは、転居日から期限の12月31日を数えることと、購入時の売買契約書を探すことの2つです。
続けて読むなら、不動産売却の税金 完全ガイドです。
訂正(2026年9月23日):国民健康保険料について、特別控除後の譲渡所得がゼロでも軽減判定を通じて保険料が増える場合があるため、FAQの「影響も基本的にありません」という説明を訂正しました。制度改正による変更ではありません。
よくある質問
Q. 相続した親の家にも使えますか?
自分が住んでいなかった親の家には、この特例(No.3302)は使えません。ただし要件を満たせば「相続空き家の3,000万円特別控除」(No.3306)という別制度が使える場合があります。実家を相続した方は相続した実家のチェックリストもご覧ください。
Q. 土地だけ売る場合は対象になりますか?
原則は「家屋とその敷地」が対象で、更地にして売る場合は取壊しから1年以内に譲渡契約を結ぶこと、取壊し後に貸駐車場などに使っていないことなどの条件付きで認められます。
Q. 単身赴任で自分は住んでいませんが使えますか?
本人が転勤などで住めない場合でも、配偶者などが住み続けており、事情が解消すれば同居すると認められる状況なら、対象になり得ます。判断が分かれやすい論点なので税務署への事前確認が安全です。
Q. 3,000万円控除を使うと国民健康保険料が上がると聞きました
神戸市の国民健康保険では、所得割に加算する譲渡所得は特別控除後の金額です。ただし、均等割・平等割の軽減判定には特別控除前の所得を使います。控除後が0円でも軽減が縮小・適用外となり、保険料が増える場合があります(出典:神戸市・法定減額制度)。所得割の基礎控除額や、後期高齢者医療など別制度での扱いも加入先へ確認してください。

