結論:住民税は「売った翌年の6月から」。所得税より3か月以上遅れてやってきます
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、税金は2回に分けてやってきます。
- 所得税(復興特別所得税を含む):売却した翌年の2月16日〜3月15日の確定申告で申告し、原則そのときに納付
- 住民税:確定申告のデータが市区町村に引き継がれ、翌年6月ごろに通知が届いてから納付開始
税率は、所有期間5年超の長期譲渡なら住民税5%(所得税等と合わせて20.315%)、5年以下の短期譲渡なら住民税9%(合わせて39.63%)です(出典: 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算、国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算)。
やっかいなのはこの時間差です。「確定申告で税金は払い終えたと思っていたら、6月に住民税の通知が来て驚いた」という声はよく聞かれます。売却代金を使い切ってしまう前に、翌年分の住民税まで見込んで資金を残しておく。これがこの記事でお伝えしたい結論です。
不動産売却でかかる税金の内訳:住民税は「20.315%の中身」の一部です
「譲渡所得税」とひとまとめに呼ばれることが多いですが、実際は所得税と住民税のセットです。内訳を整理します。
| 区分 | 所有期間(売却年の1月1日時点) | 所得税+復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315% | 5% | 20.315% |
課税対象になるのは売却価格そのものではなく、譲渡所得=売却価格−取得費(購入代金など)−譲渡費用(仲介手数料など)です。マイホームなら3,000万円特別控除で譲渡所得が0円になり、所得税も住民税もかからないケースが多くあります。逆に、相続した不動産で取得費がわからない場合は税額が膨らみやすいので、取得費がわからない場合の対処法を先にご覧ください。
支払いスケジュール:売却から住民税納付までの時系列
2026年中に売却した場合の流れで見てみます。
| 時期 | 起きること |
|---|---|
| 2026年(売却年) | 引渡し・代金受領。この時点では所得税も住民税も請求されない |
| 2027年2月16日〜3月15日 | 確定申告。所得税+復興特別所得税をこのタイミングで納付(振替納税なら4月ごろ引き落とし) |
| 2027年5〜6月 | 市区町村が住民税額を決定し、通知書が届く |
| 2027年6月〜 | 住民税の納付開始。普通徴収なら6月・8月・10月・翌年1月の年4回、給与天引き(特別徴収)なら2027年6月〜2028年5月の12回分割 |
ポイントは、住民税の支払いが最長で売却から2年後まで続くことです。2026年前半に売却した場合、最後の納期(2028年1月)まで約2年あります。「もう終わった売却の税金」が忘れたころに来る構造なのです。
計算例:譲渡所得800万円ならいくら払う?
相続した土地を売却し、譲渡所得が800万円になったケース(長期譲渡・特別控除なし)で計算します。
- 所得税+復興特別所得税:800万円×15.315%=122.52万円(2027年3月までに納付)
- 住民税:800万円×5%=40万円(2027年6月から納付)
- 合計:800万円×20.315%=162.52万円
普通徴収を選ぶと、住民税40万円は概ね4回に分かれて納付書が届きます(1回あたり約10万円。市区町村により端数調整があります)。「所得税の122万円を払って一安心」の3か月後に、さらに40万円の請求が来る。この見え方を最初から知っているかどうかが、資金計画の差になります。
なお短期譲渡だった場合は、同じ800万円でも住民税だけで72万円(9%)、合計317.04万円です。所有期間の判定は「売却した年の1月1日時点」で行う点にも注意してください。
普通徴収と特別徴収:会社に知られたくない場合の選び方
給与所得者の住民税は、通常は給与から天引きされる特別徴収です。何もしなければ、売却益の分の住民税も給与天引き分に上乗せされ、経理担当者が見る住民税決定通知の金額が跳ね上がります。給与に対して住民税が不自然に多ければ、「給与以外の所得があった」ことは推測されえます。
売却の事実を勤務先に知られたくない場合は、確定申告書の第二表にある「住民税に関する事項」で、給与・公的年金以外の所得にかかる住民税の納付方法として「自分で納付」(普通徴収)に丸を付けてください。これで譲渡所得分の住民税は自宅に届く納付書で払う形になり、給与天引き分は例年どおりの金額になります。
注意点が2つあります。
- チェックを忘れると原則どおり特別徴収に合算されます。申告時に必ず確認を
- 「自分で納付」を選べるのは給与・年金以外の所得の分だけです。給与分の住民税は今までどおり天引きが続きます
国民健康保険料・介護保険料も上がることがあります
見落とされがちですが、譲渡所得は税金以外の負担にも波及します。国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・65歳以上の介護保険料は前年の所得をもとに計算されるため、売却の翌年度だけこれらが大きく上がることがあるのです。自営業の方や年金生活の方は特に影響が出ます。
押さえておきたいポイントは次の3つです。
- 判定は特別控除後の所得:3,000万円特別控除などを適用した後の譲渡所得で計算されます。控除で譲渡所得が0円なら、保険料への影響も原則ありません
- 上がるのは翌年度だけ:譲渡所得は一時的な所得なので、翌々年度には元の水準に戻ります
- 保険料には上限(賦課限度額)がある:際限なく上がるわけではありませんが、上限額まで達すると年間数十万円の増額になることもあります
一方、会社の健康保険(協会けんぽ・組合健保)に加入している方は、保険料が給与(標準報酬月額)で決まるため、売却益で健康保険料が上がることは基本的にありません。また、扶養に入っている家族が売却した場合は、所得によって扶養から外れる可能性があるため事前に確認してください。保険料の計算方法は市区町村・保険者で異なるため、正確な金額はお住まいの自治体の窓口で試算してもらうのが確実です。
先に手を打つなら:売却代金から「翌年の税金袋」を取り分けておく
一般によく勧められるのは、決済で代金を受け取ったその日に、翌年払う税金・保険料の概算額を別口座に移しておくことです。目安は、譲渡所得×20.315%(短期なら39.63%)+国保加入者なら保険料増加分。住み替えで代金を次の購入に充てる方ほど、この取り分けを忘れて翌年慌てます。
手取り額から逆算した資金計画は、売却全体の段取りとセットで考えるのが効率的です。売却の全体像は不動産売却の流れ完全ガイドを、費用の一覧はマンション売却の諸費用一覧をご覧ください。
よくある質問
Q. 住民税の申告を別途する必要はありますか?
所得税の確定申告をすれば、その内容が市区町村に共有されるため、住民税の申告を別途行う必要はありません。確定申告が住民税の申告を兼ねています。
Q. 3,000万円特別控除で税額ゼロなら、住民税も来ませんか?
来ません。特別控除後の譲渡所得が0円なら、所得税も住民税もかかりません。ただし控除の適用には確定申告が必須です。申告しないと控除は受けられません。
Q. 売却した年の給与天引きの住民税が急に増えたのですが?
それは前年の所得に対する住民税で、今回の売却とは無関係です。売却益に対する住民税は必ず「翌年6月以降」に反映されます。タイミングを混同しやすいのでご注意ください。
Q. 住民税を一括で払うことはできますか?
普通徴収の納付書には全期分を一括で払える納付書が付いていることが一般的で、一括納付も可能です。ただし現在は一括納付による割引(前納報奨金)を廃止した自治体がほとんどで、金額面のメリットは基本的にありません。
Q. 年金受給者ですが、住民税はどう払いますか?
公的年金からの天引き(特別徴収)の対象は年金所得分で、譲渡所得分は普通徴収の納付書で払うのが原則的な取り扱いです。あわせて国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料が翌年度上がる可能性があるため、通知が来る前に市区町村で試算してもらうと安心です。
売る前に、手取り額を知っておきませんか
不動産売却は、売る前の準備で決まります。URUMAEの無料ツールなら、査定前に自分で概算をつかめます。
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※税額は個別の事情で変わります。最終判断は税理士・税務署にご確認ください。
