状況別2026年5月31日

共有名義の不動産を売却する4つの方法|全員の同意・持分売却・トラブル対処法【2026年版】

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結論:全体を売るには全員の同意が必要。ただし方法は4つあります

共有名義(1つの不動産を複数人で所有している状態)の不動産をまるごと売却するには、共有者全員の同意が必要です。これは民法251条が、共有物の「変更」(売却などの処分を含む)には共有者全員の同意を要すると定めているためで、持分(もちぶん。各共有者の所有割合)が99%あっても、残り1%の共有者が反対すれば全体の売却はできません。

ただし、「全員の同意が取れない=売る方法がない」ではありません。選択肢は次の4つです。

  1. 共有者全員で全体を売る(最も高く売れる。第一に目指すべき方法)
  2. 自分の持分を他の共有者に売る(共有関係から円満に抜けられる)
  3. 自分の持分だけを第三者に売る(同意不要だが価格は大幅に下がる。買取業者への売却は要注意)
  4. 共有物分割請求をする(話し合いで解決しない場合の法的手段)

実際の売却相談では、共有名義のケースは「夫婦のペアローン」と「相続」の2パターンがほとんどです。本記事では4つの方法の使い分けと、意外に知られていない「3,000万円特別控除は共有者それぞれが使える」という税制上の重要ポイント、そしてトラブルの予防策まで解説します。


なぜ全員の同意が必要か:共有物にできること・できないことの整理

共有不動産に対して各共有者が単独でできる行為は、法律で段階的に決められています。

行為の種類具体例必要な同意
保存行為修繕、不法占拠者への明渡し請求各共有者が単独でできる
管理行為賃貸に出す(短期)、賃貸借の解除持分価格の過半数
変更・処分行為全体の売却、建物の取り壊し、大規模な改築共有者全員
自分の持分の処分持分のみの売却、持分の贈与単独でできる(他の共有者の同意不要)

ポイントは最下段です。不動産「全体」の売却には全員の同意が要りますが、自分の「持分」だけなら、他の共有者の同意なく自由に売却できます。この非対称性が、後述する持分買取業者のビジネスの土台になっており、トラブルの火種にもなっています。

方法1:共有者全員で全体を売る(原則これを目指す)

金額面では、全員で全体を売るのが圧倒的に有利です。持分だけの売却は市場価格の持分割合よりはるかに安くなるのに対し、全体売却なら通常の市場価格で売れるからです。

実務の流れは通常の売却と同じですが、次の点が異なります。

  • 売買契約書に共有者全員が署名・押印します(委任状により代表者に委ねることも可能)
  • 決済・引渡しに原則全員の関与が必要です。遠方の共有者がいる場合は司法書士との事前調整で対応します
  • 売却代金は持分割合どおりに分配するのが原則です。異なる割合で分配すると贈与税の問題が生じることがあります

全員の足並みをそろえるコツは、売却活動を始める前に「最低売却価格」「値下げの判断基準」「費用の負担割合」を書面で合意しておくことです。売り出し後に「その値段では売りたくない」と一人が言い出して止まるのが、共有名義売却の典型的な失敗パターンです。

方法2:自分の持分を他の共有者に売る

共有者の誰かがその不動産に住み続けたい場合に適した方法です。たとえば相続した実家に長男が住んでおり、次男は現金化したい場合、次男の持分を長男が買い取れば、長男は単独名義になり、次男は適正価格で現金化できます。

注意点は価格の決め方です。身内だからと相場より大幅に安く売ると、差額分が贈与とみなされ贈与税の対象になるおそれがあります。不動産会社の査定や不動産鑑定士の鑑定で客観的な価格の根拠を作ってから取引することをおすすめします。

方法3:自分の持分だけを第三者に売る(買取業者への売却は慎重に)

他の共有者の同意が得られない場合の最後の現金化手段が、持分のみの第三者への売却です。持分を専門に買い取る業者が存在し、法律上は完全に有効な取引です。

ただし、次の2点を理解した上で判断してください。

  • 価格は大幅に安くなります。持分だけ買っても不動産を自由に使えないため、市場価格×持分割合の半額以下になることも珍しくありません。たとえば市場価格3,000万円の家の2分の1の持分でも、1,500万円ではなく数百万円という査定が現実に出ます
  • 残された共有者との関係が険悪化しやすい。持分を買った業者は、利益を出すために他の共有者へ「持分を買い取ってほしい」「あなたの持分を売ってほしい」と交渉を持ちかけ、まとまらなければ共有物分割請求訴訟を起こすのが典型的な流れです。親族が突然、見知らぬ業者と共有関係になり訴訟に巻き込まれることになります

一般には、持分の第三者売却は「他の全手段を尽くした後の最終手段」とされます。売る前に、方法2(共有者への売却)の交渉や、後述の分割請求を先に検討する価値があります。

方法4:共有物分割請求(話し合いで決まらないとき)

各共有者は、いつでも共有状態の解消(共有物分割)を求める権利があります。まず共有者間の協議、まとまらなければ裁判所への共有物分割請求訴訟となり、裁判所は次のいずれかの方法で共有を解消します。

  • 現物分割:土地を物理的に分ける(建物や狭い土地では困難)
  • 賠償分割(価格賠償):一人が全部を取得し、他の共有者に代償金を支払う
  • 換価分割:競売(けいばい)で売却し、代金を持分割合で分ける

訴訟まで進むと、弁護士費用と1年前後の期間がかかり、換価分割になれば競売のため市場価格より安くなりがちです。それでも「永遠に塩漬け」よりは出口があるという意味で、共有関係の最終的な安全弁といえます。

共有名義になりやすい2つのケースと予防策

夫婦のペアローン・共働き共有名義

夫婦がそれぞれローンを組んで持分を持つケースです。円満なうちは問題ありませんが、離婚時に「売る・売らない」「住み続けるのはどちらか」で対立しやすくなります。住宅ローンが残っている場合は、売却代金で完済できるかの確認が先決です(詳しくは住宅ローンが残っている家は売れる?をご覧ください)。離婚協議では、売却して現金で分けるのが後腐れのない解決になることが多いという声が多く聞かれます。

相続による共有

遺産分割協議で「とりあえず法定相続分どおり共有に」としたケースです。当初は平和でも、共有者の誰かが亡くなると持分がさらにその相続人へ細分化され、10年後には共有者が5人、10人と増えて収拾がつかなくなります。相続での安易な共有は「問題の先送り」であり、可能な限り避けるのが鉄則です。実家の相続については相続した実家を売る前のチェックリストもあわせてご覧ください。

税金:3,000万円特別控除は「共有者それぞれ」が使えます

共有名義のマイホームを全員で売却した場合、譲渡所得(売却益)は持分割合で各共有者に配分され、それぞれが確定申告します。ここで重要なのは、マイホームの3,000万円特別控除は「1物件で3,000万円」ではなく、要件を満たす共有者ごとに最大3,000万円使えることです(出典: 国税庁 No.3308 共有のマイホームを売ったとき)。

計算例:夫婦2分の1ずつ共有の家を4,000万円で売却した場合

  • 売却価格4,000万円、取得費・譲渡費用の合計2,400万円 → 譲渡益1,600万円
  • 夫の譲渡益:1,600万円×1/2=800万円 → 3,000万円控除の範囲内で課税なし
  • 妻の譲渡益:1,600万円×1/2=800万円 → 同じく課税なし

夫婦それぞれが控除を適用すれば、合計最大6,000万円まで控除枠がある計算になり、共有名義はマイホーム売却の税制上はむしろ有利に働きます。ただし、控除の適用にはそれぞれが確定申告をする必要があり、家屋を所有していない(土地だけの共有者である)場合は原則使えないなどの要件があります。適用可否は個別の事情で変わるため、税理士・税務署にご確認ください。

よくある質問

Q. 共有者の一人が行方不明で同意が取れません。売却は無理ですか?

あきらめる必要はありません。家庭裁判所に不在者財産管理人(行方不明者の財産を代わりに管理する人)の選任を申し立て、裁判所の許可を得て売却する方法があります。また2023年施行の民法改正で、所在等不明共有者の持分を裁判所の決定により取得・譲渡できる制度も新設されました。手続きには司法書士・弁護士の関与が事実上必須です。

Q. 共有者の一人が認知症の場合はどうなりますか?

意思能力を欠く状態では売買契約ができないため、成年後見人の選任が必要になります。後見人が付いても、マイホームの売却には家庭裁判所の許可(居住用不動産処分の許可)が別途必要です。時間がかかるため、判断能力があるうちに家族信託や任意後見を準備しておくのが最善の予防策です。

Q. 持分だけ売りたいのですが、他の共有者に知らせる義務はありますか?

法律上の通知義務はありません。ただし実務上は、事前に知らせて「まず共有者間で買い取らないか」を打診する方が、価格面でも人間関係でも良い結果になることがほとんどです。黙って業者に売った事実は登記で必ず判明し、その後の関係修復はほぼ不可能になります。

Q. 売却にかかる費用は誰が負担しますか?

仲介手数料などの諸費用は、持分割合に応じて負担するのが原則です。売買契約前に負担割合を共有者間で書面合意しておくとトラブルを防げます。費用の内訳はマンション売却の諸費用 全一覧を参考にしてください。


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※税額は個別の事情で変わります。最終判断は税理士・税務署にご確認ください。

この記事について

本記事は、不動産売却情報メディア URUMAE 編集部が公表されている制度・法令に基づいて執筆・編集しています。 制度・税率は執筆時点の情報です。個別の税務相談は税理士にご相談ください。

運営者は宅地建物取引士。不動産業界での実務経験15年。

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