売値が残債を上回っていても、資金が足りないことがあります
「ローンが2,800万円、査定が2,900万円なら、そのまま売れるでしょうか」。売却費用が仮に120万円なら、返済に回せるのは2,780万円です。売値は残債を上回っていても、20万円が足りません。
ローン返済中でも売却はできます。ただし通常の売却では、完済して担保の抵当権を抹消する段取りが必要です。比べるのは売値と残債だけでなく、費用を引いた金額と完済必要額です。
最初に「売却代金−費用+使える自己資金」を計算する
返済予定表や金融機関のアプリで現在の残高を確認します。そのうえで、売却費用と、生活費を残した後に補える自己資金を整理してください。
次は計算方法を示す仮の例です。売却価格は成約予測ではなく、費用120万円も相場ではありません。完済必要額は利息等を含めて2,800万円と仮定します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却代金 | 2,900万円 |
| 仲介・登記等の売却費用 | −120万円 |
| 売却代金から返済へ回せる額 | 2,780万円 |
| 追加できる自己資金 | +50万円 |
| 完済に使える資金 | 2,830万円 |
| 完済必要額 | −2,800万円 |
| 上記の支払い後に残る額 | 30万円 |
この30万円には、表に含めていない引っ越し費用や新居の初期費用、売却に伴う税金は反映していません。完済できることと、住み替え後の家計に余裕があることを分けて考えます。
費用は一律に「売値の何%」で済ませず、売却費用の内訳をもとに見積もりを集めます。金融機関の全額返済額に手数料が含まれていれば、別の費用欄へ重ねて計上しないようにしてください。
金融機関には、売買契約の前から連絡する
現在の残高と、決済日に必要な完済額は同じとは限りません。利息や手数料を含む必要額、返済申込みの期限、抵当権抹消書類の受取方法を借入先へ確認します。
たとえば三井住友銀行の案内では、売却等で返済当日に抹消書類が必要な場合、3週間前、大型連休を挟む場合は4週間前までの申込みを求めています。これは同行の扱いで、すべての金融機関に共通する期限ではありません。
また、住宅金融支援機構は、売却などで抹消書類を急ぐ場合、インターネットの「住・My Note」では申し込めないと案内しています。普段使うアプリで返済できても、売却当日の書類受取りまで対応できるとは限りません。
「売却代金で全額返済し、同じ日に抹消書類が必要です」と伝え、契約で引渡日を約束する前に日程が組めるか確かめましょう。
決済日は、入金・完済・登記申請を連携させる
売却代金で返す場合の一般的な流れは、買主から代金を受け取り、ローンを返済し、金融機関から抹消書類を受け取る形です。司法書士が書類を確認し、所有権移転などと合わせて登記を申請できるよう調整します。
住宅金融支援機構の完済案内も、返済後には抵当権抹消の手続きが必要としています。完済しても、登記簿の抵当権が自動で消えるわけではありません。 当日に登記申請しても、登記の完了まで同日とは限りません。
なお、契約時に受け取った手付金も売却代金の一部です。すでに使っていれば、決済日に受け取る残代金だけでは足りなくなることがあります。仲介手数料などを先に払う予定も含め、金額と支払日を並べて確認してください。
注意:不足が出る場合は、高い査定額で埋めない
査定額は売れる金額の保証ではありません。根拠となる成約事例を確認し、想定価格と、それより下がった場合の両方で不足額を計算します。「一番低い査定なら確実」とも言えません。
不足を自己資金で補えるなら通常売却を検討できます。補えなければ、売却時期の見直しや住み替えの資金調達を相談します。新たな借入れは審査と返済負担の確認が必要なので、利用できる前提で新居の契約を急がないでください。
返済継続が難しい場合には、債権者の同意を得る任意売却を相談する道もあります。住宅金融支援機構も残債務を圧縮する選択肢として案内しています。滞納してからでないと相談できない、と待つ必要はありません。売却後に残る債務が自動で免除される制度でもありません。
先に確かめるのは、決済日に足りる資金です。
完済できない見込みなら任意売却の条件と残債、日程を整える段階なら引渡しと引っ越しの順番を確認できます。
よくある質問
Q. ローンを完済してから売り出す必要がありますか?
事前に完済しなくても、売却代金による返済を予定して売り出せます。ただし決済時の完済と抹消が可能か、早めに金融機関と確認します。
Q. 査定額が残債より低ければ売れませんか?
差額と売却費用を自己資金などで補えれば、通常売却が可能な場合があります。補えないまま契約せず、資金計画を先に固めます。
Q. ペアローンや共有名義でも同じですか?
それぞれの借入残高と完済手続き、抵当権、所有者全員の売却意思を確認します。一方のローンだけ返せばよいとは限りません。

