家賃12万円でも、返済に回せるのは12万円ではありません
「家賃12万円で貸せて、ローンが月8万円なら黒字」。転勤が決まると、こんな計算をしたくなります。ですが、空室や管理費を入れると結果は変わります。
売るか貸すかは、戻る時期、借入先の手続き、支出後の収支の順で考えます。戻る予定があっても、持ち出しに耐えられなければ貸し続けられません。
この記事では、全国の持ち家で使える判断の順番を整理します。相場の利回りではなく、自分の家の条件で比べるための方法です。
戻る予定と、借入先の扱いを先に確かめます
まず、戻る時期を「3年後」「未定」「戻らない」に分けます。未定なら、貸した後に自宅として使える時期も未定になると考えてください。
住宅ローンがあれば、募集前に借入先へ相談します。フラット35では、転勤などで一時的に住めず、戻ることを前提とする賃貸は可能です。ただし住所変更の手続きが必要です。
一方、投資用取得などの目的外利用には一括返済を求める場合があります。民間ローンにも同じ条件を当てはめず、必要な承諾・届出を確認しましょう。出典:住宅金融支援機構のFAQ。
だから、借入先には「転勤期間」「家族も転居するか」「戻る予定」を伝えます。売る場合の残債整理は住宅ローンが残っている家の売却で確認できます。
【計算例】年間48万円の余裕が、費用次第で消えます
次は、月12万円で貸し、月8万円を返済する仮の例です。実在の物件や相場の平均ではありません。入居を11か月、管理委託料を受取家賃の5.5%として計算します。
| 項目 | 年間の金額 |
|---|---|
| 満室なら受け取る家賃 | 144万円 |
| 空室1か月による減収 | −12万円 |
| 管理委託料(132万円×5.5%) | −7.26万円 |
| 管理費・修繕積立金(月2万円) | −24万円 |
| 保険・設備修理への備え(仮定) | −5万円 |
| ローン返済前に残る金額 | 95.74万円 |
| ローン返済(月8万円) | −96万円 |
| 差し引き | −0.26万円 |
単純な家賃と返済の差は年48万円ですが、この条件では既に年2,600円の持ち出しです。さらに固定資産税など、募集費用や退去時の修繕費も見込みます。
これは税引き後の利益ではなく、お金の出入りの試算です。ローン元金の返済は資産・負債にも影響するため、全額を経費とは扱いません。税務上の扱いは税理士等に確認してください。
つまり、空室が延びたり修理が重なったりしても、転勤先の生活費を圧迫しないかまで比べます。
戻る時期が決まっているなら、契約の終了条件を確認します
普通借家では、貸主の更新拒絶に正当な事由が必要です。帰任すれば自由に明け渡してもらえる、という前提では貸せません。
戻る予定がある場合の候補が、期間満了で更新なく終わる定期借家です。ただし契約書に期限を書くだけでは足りず、契約前の説明などの要件があります。
期間1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに終了を通知します。通知が遅れると、その通知から6か月間は終了を借主に主張できません。出典:国土交通省「定期建物賃貸借Q&A」。
だから管理会社には「誰が終了通知を管理するか」も聞きます。帰任が早まった場合まで自由に解約できる制度ではありません。
【注意】修繕費と、貸した後の売り方も残ります
退去時の修繕をすべて借主に請求できるわけではありません。経年変化や通常の使用による傷みは、家賃に含まれるというのが国の考え方です。出典:国土交通省の原状回復ガイドライン。
貸す前には設備の年式と状態を残し、交換が近いものを予算に入れます。管理を任せても、所有者の支払いまでなくなるわけではありません。
また、貸した後に売る場合は、賃貸借を引き継ぐ売却を検討することになります。空き家の価格と同じ前提で比べず、オーナーチェンジ売却の条件も確認してください。
売却見込みと賃貸収支を、同じ時点で取り寄せます
貸す判断は、家賃より戻る時期と持ち出し額です。
借入先へ条件を聞き、売買と賃貸の見積もりを取りましょう。賃貸は希望家賃だけでなく、募集期間、管理料、初期費用、修繕負担も並べます。
戻る予定が明確で、空室時の支出にも対応できるなら賃貸を検討できます。戻らず保有を続ける理由が弱いなら、売却の手取りと比較する段階です。
続けて読むなら、住み替えの順番の決め方です。
よくある質問
Q. 転勤が3年なら貸すほうが得ですか?
年数だけでは決まりません。借入先の条件と定期借家での募集見込み、支出後の収支を揃えて比べます。
Q. 家賃の査定は高いほうを選べばよいですか?
募集家賃と、実際に借り手が決まる家賃は別です。想定する募集期間や、決まらない場合の見直し額も聞いてください。
Q. 帰任が早まれば、定期借家を途中で終えられますか?
当然には終えられません。契約内容や借主との合意などが問題になるため、契約前に早期帰任の場合を相談します。

